近年、「脳を理解する」ための脳科学 (ニューロサイエンス) の知見に基づいた「脳を活用する」ためのニューロテクノロジーの研究開発が盛んになっています。本講義の講師は、認知機能の脳内基盤に関する基礎研究の成果を活かした脳科学応用技術の開発を目指し、国内で初めて「ニューロテクノロジー」の名前のついた研究室を立ち上げました。その代表的成果が、脳波による意思伝達装置「ニューロコミュニケーター」の開発です (2010年3月にプレス発表) 。ニューロコミュニケーターは、脳と機械を直結するブレイン – マシン インターフェース (BMI) の中でも特に認知型BMIと位置付けることができる技術の一つで、注意の高まりを反映した脳波成分「事象関連電位」を、パターン識別技術によってリアルタイムで検出できるのが特徴です。また、小型でコンパクトな無線式脳波計測装置や効率的にメッセージを生成してCGのアバターが伝達するアプリケーションなど、様々なコア技術が搭載されています。 本講義では、ニューロコミュニケーターの開発につながった社会的・技術的背景とともに脳波テレパシー技術の動作原理をわかりやすく紹介します。また、そのコア技術を用いた産業応用への取り組みをご紹介したいと思います。これらの開発で私が体験した「驚きと感動」を皆さんと共有できれば幸いです。