パワーエレクトロニクス技術の急速な発展に伴い、ハイブリッドカー (HEV) や電気自動車 (EV) だけでなく、産業用モータはインバータで制御されるのが主流になりつつある。しかし、インバータサージと呼ばれる立ち上がりの急峻なインパルス電圧によってモータの絶縁破壊のトラブルが発生し、その対策と計測評価技術が重要な課題となっている。 絶縁システムの劣化破壊はこの繰り返しサージ電圧によって発生する部分放電が原因であるが、その発生メカニズムや検知の方法は、従来のAC電圧の場合と比べ大きく異なっており、良く理解されていない。その絶縁評価方法は各企業で独自に検討されているが、不明な点も多く、経験に頼るところが大きい。その理由の一つとして、ナノ秒時間スケールの部分放電現象の発生条件が、様々な環境要因で変化することが挙げられる。 一方2015年、インバータ駆動モータ絶縁に関する国際電気標準会議 (IEC) 規格が発行された。今後は各絶縁クラスに対応した規格基準をパスしたことを示す銘板をモータに付与することになり、国際競争の下で信頼性の高いモータの製造が要請されることになる。どのような条件で部分放電が発生し、それをどのような検知器と手順で正確に捉えることができるのか、今多くの製造現場でその答えを求めている。 本講演者が委員長を務める電気学会調査委員会では、多くのメーカと大学が協力して国際規格関連の共通試験を実施し、実機モータでの診断評価法や問題点を検討しており、その内容の一部をここで紹介する。