生分解性高分子材料を医療材料として用いる場合、滅菌が必須である。これまで、多くの有機高分子製の医療材料は、エチレンオキサイドのガス滅菌法が応用されてきたが、最近では残留ガス毒性のため、放射線滅菌法が主流となっている。しかし、生分解性の吸収性縫合糸や吸収性骨折治療材のポリ乳酸は放射線照射により分解が著しく生じるため、放射線滅菌法を導入できなかった。もし、放射線滅菌できれば、生産コストの軽減と安全性が高まる。一方、生分解性ポリ乳酸を食品包装や一般工業用として用いる場合、その成形物の耐熱性や耐加水分解性に問題があり劣化しやすく、安定性が悪いのでその用途に限界があった。 本講演では、生分解性高分子材料の放射線滅菌の可能性を示唆する。