新規プラスチック素材あるいは組成物の開発において、その性能評価基準として様々な物理的・化学的パラメータが重視されるが、最も軽視され易いのが成形加工性である。研究開始から長年を経て社外求評段階に至り、そこでユーザーから指摘されて初めて気が付くケースが後を絶たない。プラスチックが有用であるためには、その潜在的な性能がいかに優れていても、一定の生産性/コストを満足する成形加工条件・時間内で目標とする一定レベルの性能・機能を発現しなければ用をなさない。
本講では、一見捉えどころのないプラスチックの成形加工性を、実際の成形加工現場に即して、その分子論的基礎と共に分かり易く解説する。ここでは最も高度な材料設計/成形加工技術が求められる結晶性高分子のポリ乳酸 (PLA) を代表例として、その結晶化挙動等に関する基礎的知見をベースに、成形加工性をさらに向上させるための具体的な添加剤処方箋についても論及する。これまで産学両分野で約30年間、ポリ乳酸を中心とする生分解性プラスチックの理想の化学構造と高性能・高機能化材料設計/成形加工技術を求め、基礎・応用研究から技術・事業開発までを世界に先駆け成し遂げた講師による渾身のセミナーである。
- はじめに: 科学と技術の狭間で
- 固と全体の問題
- 自然農法主宰者、福岡正信の呟きに耳を傾ける
- アカデミアの世界では
- 線形科学から非線形科学へ
- 終生の挑戦者として
- 究極の高性能・高機能化材料設計と成形加工技術を求めて
- 熱可塑性プラスチック (特に結晶性高分子) の成形加工性とは
- 成形加工の物理的意味
- 溶融体の室温下への冷却固化・賦形過程におけるガラス化又は結晶化
- 各種成形加工法と成形加工性支配因子
- 溶融押出過程
- 高粘度
- 押出成形 (フィルム、シート)
- 発泡成形
- ダイレクト・ブロー成形
- 中粘度
- 低粘度
- 冷却固化過程
- 室温
- 室温下への冷却だけでガラス化 ⇒ Tg
- Tg<室温の場合
- 室温下への冷却過程で結晶化が必須 ⇒ 結晶化速度:
- 成形加工性改良添加剤
- 溶融押出過程
- 増粘剤
- エポキシ基含有反応性改質剤
- 架橋剤 (有機過酸化物)
- 流動性改良剤、粘度低減剤
- 冷却固化過程
- 不透明耐熱化
- 透明耐熱化
- 成形加工法
- 押出成形
- 射出成形
- サーモフォーミング
- 発泡成形
- ブロー成形
- 結晶性高分子の結晶化挙動と成形加工性
- 成形加工工程における結晶化の分類
- Melt Crystallization (メルトから室温下への降温冷却過程における結晶化)
- Cold Crystallization (室温からの加熱昇温過程における結晶化)
- 真空・圧空成形
- 発泡成形
- インジェクション・ブロー成形
- 等温結晶化挙動
- 結晶化速度式G=G0exp ( – ED/RT – KTm/RT (Tm – T) の物理的意味
- 第一項:セグメントの拡散過程
- 第二項:核形成過程
- 最も結晶化速度の速い結晶化温度Tc (Tg < Tc
- 結晶化速度パラメータ
- 非等温結晶化
- 結晶化速度を支配する因子
- 一次構造
- 分子量
- 造核剤や結晶化促進剤
- 結晶化速度が遅い場合に顕在化する問題点
- 冷却・固化未達
- 耐熱性不足:低い熱変形温度
- 力学的特性
- 寸法安定性不良
- 成形サイクル
- 二次結晶化
- ケース・スタディ
- 微生物ポリエステル (PHA) 系
- 最も古い歴史と豊富な研究実績を誇る微生物ポリエステル系 (β – オキシ酸の重縮合体) が、これまで世界中の数多くの一流企業が参入と撤退を繰り返し、40年後の今日でも未だ本格的に事業化されない理由とは?
- 成形加工性改良添加剤
- 代表例として、ポリグリセリン脂肪酸エステル (PGFE)
- 基本特性
- 一次構造の分子設計
- マルチ機能改質剤としてのPGFE
- 分散安定剤
- 流動性改良剤
- 可塑剤・耐衝撃性改良剤
- 結晶化促進剤
- ポリ乳酸 (PLA) 成形品への応用事例 (Tg, Tmは不変)
- 射出成形と真空成形
- 真空成形における透明耐熱化の潜在的可能性