接着剥がれの原因を分析すると、接着界面での反応阻害に代表される初期的な不具合が多いことが分かる。また、クリープ負荷による剥がれに代表される耐久性能不足の問題も散見される。
初期的な剥がれ不具合については、剥がれ原因を究明し影響因子を排除すれば対策が可能であり、課題解決のハードルはあまり高くないと云えるが、耐久性能不足による剥がれについては、課題解決すべき内容が多い。その1つが剥がれ (劣化) 寿命の予測である。接着仕様の劣化寿命予測については、温度 (熱) 等の環境データと経過時間により変化する接着強度等の特性値をアレーニウス型やラーソンミラー型の寿命予測式により重回帰分析すれば、目的とする温度や時間における特性値が予測可能である。更には、この寿命予測式を用いマイナー則の考え方により劣化加速条件が設定可能である。
本講座では、剥がれや劣化のメカニズム解析と寿命予測並びに劣化加速条件の設定方法について解説しているので、剥がれ不具合や劣化による接着性能低下の問題が発生した際には、本内容を活用していただければ幸甚である。
- 接着メカニズム
- 結合の種類
- 界面の濡れ性
- 界面の接着反応
- 接着剥がれ不具合品の原因究明と対策方法
- 原因分析
- 原因究明と対策内容
- 被着材料・PA6の脱水による接着発現不足
- プライマーの攪拌不足による反応阻害
- 洗浄工程での接着阻害物質付着
- アルミ鋳造工程における離型剤による接着阻害
- 急速硬化ウレタン接着剤使用の生成炭酸ガスによる接着阻害
- プライマーの膜厚不足によるアルミ被着面の界面剥離
- 被着PBT樹脂のUV改質時間設定ミス
- 被着PA6樹脂の熱サイクルによるガラス剥離
- 温水浸漬試験によるPA6製品の界面剥離 (UV硬化接着)
- クリープ負荷による被着POMからの界面剥離
- ガラスプライマーの接着反応不足 (両面テープ)
- 被着EPDMからのブリード物による接着反応阻害 (両面テープ)
- クリープ負荷によるガラス被着面からの剥離 (両面テープ)
- 被着PA6製品からの水蒸気による接着反応阻害 (高周波誘電接着)
- 両面テープの吸湿による接着反応阻害 (高周波誘電接着)
- アレーニウス型における寿命予測
- 寿命予測式の導出
- 寿命予測式の重回帰分析
- T – t線図の作成
- 活性化エネルギーの求め方
- ラーソンミラー型における寿命予測
- 寿命予測式の導出
- 寿命予測式の重回帰分析
- 材料定数・Cの特定と検証
- マスターカーブの作成
- 劣化寿命予測
- クリープ負荷による剥がれ (1液ウレタン 他)
- 温水浸漬劣化 (1液シリコーン 他)
- 熱劣化 (アクリル系)
- 疲労負荷による劣化 (アクリル系)
- アクリル系両面テープのクリープ負荷による剥がれ
- 劣化加速条件の設定方法
- 1液シリコーン接着仕様
- 1液ウレタン接着仕様
- 2液アクリル系接着仕様
- ラーソンミラーマスターカーブ並びにT – t線図の屈曲とその理由
- T – t線図における屈曲点と接着剤のガラス転移温度との関係
- LMマスターカーブとT – t線図の対比
- LMマスターカーブが屈曲する場合の対応
- クリープ剥離不具合品のワイブル統計解析による寿命予測
- 分布図によるワイブル2母数の特定
- 最尤法によるワイブル2母数の特定
- 変動係数・CVとガンマ関数によるワイブル2母数の特定
- 信頼度曲線と重回帰分析によるクリープ強度曲線との対比
- 信頼度の指定によるクリープ剥離寿命の特定
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