本セミナーでは、森林バイオマス活用における基礎から解説し、森林バイオマス資源活用事業の持続可能性、実証事例・途上国の森林保全政策から見る森林資源利用の可能性について詳解いたします。
バイオマス資源の中で、有効活用が望まれている林地残材等の森林バイオマス。運用コスト面等の課題を抱え、事業化が進んでいない現状がある一方、新たな地域産業の創出や林業の活性化、森林保全、水源の確保、循環型社会の構築など、資源利用には多面的なメリットも抱えている。 本セミナーではこうした特性を持つ森林バイオマスに注目し、国内における林地残材の賦存量や、実証実験、再生可能エネルギーの全量買取制度等の政策面から考察し、事業化実現の可能性を探る。 また、地球温暖化対策として、国際的に議論がなされている森林保全の取り組みであるREDD+の話題を提供し発展途上国における森林保全と森林資源との関係を探る。また中国・ベトナム・インド等の新興国における植林政策の推進から見る資源供給の可能性についても触れる。
欧州や北米では森林バイオマスの利活用が盛んであると言われている。一方で、日本は森林バイオマスの利活用が進んでいないと言われている。 この要因について、森林バイオマス資源の状況や利用実態から検証した結果を報告する。
世界では再生可能エネルギー導入のためRPSやFITなどの政策手法を用いた取組を進めている。国内でも再生可能エネルギーの全量買取制度の検討を進めている。 本講座では、海外において実施されてきた再生可能エネルギー導入施策についてのその内容と効果や国内の全量買取制度の動向についてご紹介し、政策導入がなされた場合における森林バイオマスエネルギーに係る事業の成立可能性やさらに必要となる方策について検討を行った結果をご報告する。
森林バイオマス資源の大量集積、大規模発電という形式が普及するのは困難で、地域資源量にあった規模と熱需要中心のシステムにならざるを得ないという状況である。 北欧を中心に森林バイオマスエネルギー利用が進む一方で、国内の普及促進が中々進まない状況であるが、北欧の利用形態とは異なる国内のエネルギー需要に合った変換システムを構築することが望まれる。 また、主要な需要家となる地域の産業構造に適したエネルギー供給システムとすることが事業継続性を担保することになると言える。 すなわち森林バイオマスという地域資源を有効に利活用できる地域産業 (需要) を掘り起こし、あるいは創出することによって双方の事業を活性化させ、持続性を確保することになる。 さらに、このような地域産業興しは、ノスタルジックな過疎化防止・故郷再生ということだけでなく、グローバル市場の変遷や人口構造の変化に対応するため、従来の都市型産業とは異なる地域型産業、すなわち従来見過ごされてきた有形・無形の地域資源の付加価値を読み解き、新たな産業の場、生活・社会の場を再構築するという目的を持っているのではないかと思える。
地球温暖化対策として、途上国の森林保全の取り組み (REDD+) が進んでいる。これは地球温暖化の主因である二酸化炭素の増加について、その約2割が途上国の森林減少が原因であり、その抑制が温暖化対策として必要であることから、注目されてきたものである。そのため、途上国が自国の森林を保全し二酸化炭素排出を抑えられれば、その量に対して報償が得られるという国際的な仕組みを、国際交渉の中で作ろうとしている。 これを、森林減少・劣化による排出の削減、および森林保全、持続的森林経営、炭素蓄積の増強と呼び、その英語の頭文字を取ってREDD+ (レッドプラス) と略称されている。昨年のCOP16では、その仕組みの大枠が合意され、具体的な制度や技術開発が進められている。 このREDD+の動きは、途上国の森林バイオマス供給量に大きな影響を与えるものと考えられる。これまで、途上国では、森林を伐採し、農地等に転用することにより、木材製品とともに森林バイオマスが大量に生まれてきた。しかしながら、REDD+が広まり、森林の伐採・転用は抑制され、持続的な森林経営が進むことになれば、これまでにように木材や森林バイオマスは生じない恐れがある。 東南アジアでは、インドネシアやカンボジアの森林減少が多いが、両国ともREDD+により森林減少とそれに伴う二酸化炭素排出の削減を進めようとしている。その一方、中国やベトナム、インドでは植林政策を推進しており、それが経営に乗れば、継続的な木材生産と森林バイオマス供給量が期待できる。