多製品・小ロット製造が主流になりつつあり、多製品製造に向けた設備洗浄の重要性が指摘されています。交叉汚染を防止するためには、実効性のある洗浄手順や性能目標基準 (許容残留基準) の確立が重要です。21世紀の洗浄バリデーションでは、リスク及び新しい科学に基づいた統計的な考え方で許容基準値を設定することが求められています。また、あらゆるワーストケースを推定した実施手順、許容限度を正確に定量できる分析法、毒性学的データが不可欠です。
2018年4月にEMAから洗浄バリデーションの許容基準に関するQ&A最終版が発出されました。本講座では、この最終版についても解説致します。
- 共用設備の要件
- CIP関連設備設計のポイント
- リスクをベースとした医薬品製造 (Risk – MaPP)
- 設備の洗浄方法
- 洗浄方法の確認のために必要な物理的パラメータ
- LRC値 (Log Reduction in Concentration)
- 洗浄バリデーションの実施手順
- 設計時適格性の評価
- 据付時適格性 (IQ) のポイント
- 運転時適格性評価 (OQ) のポイント:ワーストポイントの見つけ方、リボフラビン 試験とは
- 稼働性能適格性評価 (PQ) のポイント
- 残留許容基準値の設定に関する最新の考え方
- 分析法とサンプリング
- CIPにおけるリスクマネジメント
- 許容残留値設定に際して留意すること
- EMA/洗浄バリデーションの許容基準に関するQ&A最終版
- 毒性学的データを考慮した洗浄許容基準値
- 洗浄シミュレーション:目視基準と10ppm基準・0.1%投与量基準の比較
- 医薬品製造所における洗浄バリデーション事例:不適切なバリデーションによりロットアウトになったケース
- FDA査察における指摘事項
- EMA査察における指摘事項
- 暴露許容量 (ADE) 設定のポイント
- 1日暴露許容量 (ADE) 設定の考え方とは?
投与量と生体反応度との関係、暴露結果などの調査データの活用法
- 新しいISPEガイドライン「リスクをベースとした医薬品製造 (Risk – MaPP) 」では、ADEは「物質の1日摂取量で、それ以下の量では生涯を通じて、いかなる経路で服用しても有害事象の発生は予想されない量」と定義されている。ただし、ADEはかなり控え目な値である。
- ADEは、単に最低暴露量だけでなく、利用可能な安全性に関するデータすべてを参考として設定すべき値であり、洗浄バリデーションでの計算で安全な出発点となる意味を持っている。
- ADEを利用すれば、投与量を基本とした基準で仮説を設定しながら作業する必要がなくなり、企業が有するすべての科学を利用することが可能となる。
- ADEを利用すれば、洗浄後の残留物に関するデータを評価するときや、作業面から評価するとき、投与量と生体反応度との関係から設定した基準よりもフレキシブルで余裕を持った安全性の科学的根拠が設定できる。
- ADEは控えめな値であり、洗浄バリデーションで使用すれば、安全で控えめなレベルが得られる。
- 投与量と生体反応度との関係から導いた基準を使った結果を参考として、部品、設備、ならびに一連の製造ラインや包装ラインを不必要に専用化している事例が多くみられる。なかには、製品の製造でのフレキシビリティを過剰なまでに制約して製造する順序を規制するなどを行っている例がある。このような状況では、十分に洗浄することが不可能と推測できる。さらには、不必要に使い捨て設備を利用している例も認められる。これらの問題は、ADEを利用することで解決しやすくなる。
- 過去の洗浄バリデーションでは、投与量と生体反応の関係から基準を設定していたが、新しい時代の洗浄バリデーションでは、新しい科学に基づいた統計的な考え方で許容基準を設定すべきである。