第1部 撥水・親水性発現のメカニズムとその制御
(2018年9月5日 10:30〜12:00)
濡れ性制御技術は、エレクトロニクス機器・屋内外建材・輸送機器・スポーツ用品・分析カラム等、身近な生活から生産現場の至る所で広く利用されています。一方で、アプリケーションの裾野は広いにも関わらず、この分野を学術的視点から取り扱う機会は限られている状況とも言えます。受講者の方々に基礎的なことからアプリケーション開発までの理解を俯瞰的に高めて頂くために、原理・基礎方程式等の理解から、単純に「ヤングの式等」の一般的な理論に沿わないことも多い理由にも踏み込み、「原理」と「表面の形成方法」の間に存在する解決課題における理論と実際の間を橋渡しするような基礎的な知見を提供していきます。
工学的視点に立脚した表面濡れ性の基礎的理解と、濡れ性制御のための表面設計方針のポイント (付与方法と改善方針) をご理解していただければと思います。
- 表面濡れ性に関する基礎
- 撥水性と親水性の定義
- 接触角に関する基礎方程式 Young’s model・Wenzel’s model・Cassie’s model
- 基礎方程式からみた、超撥水性表面と超親水性表面の理解
- 液滴の転落角 (付着性) に関する基礎方程式
- 付着エネルギー (Furmidge model・Contact angle hysteresis)
- 固体表面エネルギーとZismanプロット
- 液体の滑落性に焦点を当てた濡れ性制御技術
- 動的撥水性評価の重要性
- フッ素系の撥水剤とアルキル系の撥水剤の例
- 必ずしも、接触角:高 ⇒ 転落速度:高 ではない。
- 液滴が傾斜表面上を転落する際の内部流動状態
- 液滴の接触角と液滴の転落速度の関係
- 撥水性素材の凝集が水滴の挙動を阻害する。
- 接触角:高 ⇒ 転落速度:高 になる条件とは?
- 水滴高滑落性表面 (?平滑性表面) の理解と工学的ポイント
- 表面粗さの違いによる液滴の滑落性の違い
- 表面のパターン構造の違いによる液滴の転落性の違い
- 液体の滑落性を向上させる「表面形成プロセス」の工学的ポイント
第2部 接触角の測定とぬれ性の評価
(2018年9月5日 12:45〜14:15)
材料表面のぬれ性を評価するための代表的な手法の1つが接触角測定です。接触角は、測定そのものは簡単ですが、材料の表面特性をきわめて鋭敏に反映します。この接触角の大小を決めるのは、液体、固体の表面張力 (表面自由エネルギー) です。
本セミナーではまず、ぬれ性評価の基本となる接触角と表面張力の概念について説明します。 次に、これまでの相談事例などを踏まえ、接触角の測定上の注意点を解説します。
- ぬれと接触角
- 接触角とは
- 接触角から何がわかるか
- 接触角測定の表面感度~膜厚と表面被覆率
- 表面張力
- 表面張力とは
- 表面張力から何がわかるか
- Youngの式~接触角と表面張力との関係
- 接触角の測定方法と測定上の注意点
- 接触角の測定方法
- 接触角は10°ばらついてアタリマエ
- 接触角は何回測定すればよいか
- 接触角と表面汚染~大気曝露時間,汚染量
- 各種洗浄による接触角の変化
- 接触角の定義をどうするか~液量依存性と経時変化
- 固体表面の帯電の影響
- 試液として蒸留水は使えない?
第3部 環境適合型撥水撥油剤の開発と応用
(2018年9月5日 14:30〜16:00)
フッ素系撥水撥油剤は、テキスタイル、不織布、カーペットおよび紙などへ 撥水撥油性を付与出来る、高機能材料である。近年、フッ素系撥水撥油剤の原料で あるフルオロテロマーに由来するパーフルオロオクタン酸 (PFOA) の環境ならびに 生体への蓄積性懸念が高まりより広く調査・研究が行われるようになった。
本講座ではPFOA問題の概要、フッ素系撥水撥油剤の構造と撥水性能発現機構の関 係について触れ、PFOAを含まない環境適合型 (短鎖型) のフッ素系撥水撥油剤の 代替技術とその商品および今後の展望について述べる。
- フッ素の機能について
- フルオロアルキル化合物の製造方法
- フッ素系撥水撥油剤について
- フッ素化合物を取り巻く環境課題について
- パーフルオロオクタン酸 (PFOA) のグローバル規制動向
- PFOAに関するこれまでの取り組み
- フッ素系撥水撥油剤の撥水性能発現機構
- 動的接触角
- 熱分析
- 分子鎖凝集構造
- 環境応答性
- 環境適応型 (短鎖型) フッ素系撥水撥油剤の材料設計指針
- 応用
- テキスタイル用途
- 撥水撥油性と風合いを合わせ持つフルオロ – シリコーンハイブリッド型撥水撥油剤
- Soil Release (SR) 剤
- 不織布用途
- 防水・防湿コーティング剤
- 長鎖 (C8) と短鎖 (C6) フルオロアルキル基を区別する解析方法
- 今後の展望