抗体医薬などのバイオ医薬品は、長期間にわたり安定に保存可能な製剤とする必要がある。特に近年は、凝集体の免疫原性が懸念されていることから、凝集体の正確なモニタリング、発生機構の理解、および発生の抑制は重要な課題である。
本講演では、バイオ医薬品の製剤の理解に必須となる蛋白質溶液物性の基礎知識についてレビューを行ったのち、バイオ医薬品の凝集体発生のメカニズムを解説し、ケーススタディを交えながら、各種添加物による安定化機構や添加の際の注意点について説明する。また、製剤安定性予測についてのケーススタディも紹介する。バイオ医薬品の凝集体の免疫原性が懸念される背景をメカニズムの観点から解説するとともに、適宜、凝集体についてレギュレトリーサイエンスの観点からの動向についても述べる。バイオ医薬のCMCに関連した分析や研究を行う際に必要となる基礎知識の習得が本講演のゴールである。
- バイオ医薬の物理化学分析に関する基礎知識
- タンパク質、抗体の取扱に必要な基礎的知識
- 一次構造、二次構造、三次構造、高次構造
- 濃度決定
- 化学構造変化
- 変性
- バイオ医薬品と凝集体
- バイオ医薬品に含まれる凝集体研究の現状、免疫原性との関係
- 凝集体の分類
- 解離会合
- 物理ストレスとの関係
- サイズによる分類
- 特性解析と規格との関係
- 粒子サイズに応じた分析法 0.1μm以下
- HPLC – SEC
- 超遠心沈降速度法 (AUC – SV)
- フィールドフローフラクショネーション (FFF)
- 動的光散乱法 (DLS)
- 粒子サイズに応じた分析法 0.1〜2μm
- 濁度測定
- 共鳴質量測定法
- 粒子トラッキング法
- レーザー回折法
- 粒子サイズに応じた分析法 2μm以上
- フローイメージング (FI)
- パーティクルカウンター (光遮蔽法)
- その他の方法
- バイオ医薬品における凝集体関連情報
- 2014年8月発表”Guidance for Industry” について
- USP787について
- 日本薬局方での取扱について
- タンパク質の安定性と凝集メカニズム
- タンパク質の安定性
- コロイド安定性と構造安定性
- コロイド安定性とDLVO理論
- 構造安定性と自由エネルギー変化
- タンパク質の凝集メカニズム
- 第2ビリアル係数、拡散係数の濃度依存性
- タンパク質の電気的性質、安定性とpH
- タンパク質の等電点、ゼータ電位、ネットチャージ
- 溶液のpHとタンパク質の安定性
- タンパク質の安定性と溶媒組成、添加剤の効果
- タンパク質の安定性と塩
- ホフマイスター系列
- 塩とタンパク質の相互作用
- 塩によるタンパク質の安定化・不安定化
- タンパク質の安定性と糖類
- 選択的溶媒和
- 糖によるタンパク質の安定化
- 糖を添加する場合の注意点
- タンパク質の安定性と界面活性剤
- 界面活性剤とタンパク質の相互作用
- 界面活性剤によるタンパク質の安定化
- 界面活性剤を添加する場合の注意点
- タンパク質の安定性とその他の添加剤
- アミノ酸
- アルコール
- 凝集体の免疫原性
- 抗体産生のメカニズム
- T細胞依存的抗体産生
- T細胞非依存的抗体産生
- 免疫原性の評価法
- 各手法の原理
- 各手法の特徴・比較
- 各手法の測定例
- 免疫原性の要因となり得る因子
- アミノ酸配列
- 修飾状態
- 凝集体
- 免疫原性を低減させる方法
- 免疫原性の予測法
- in silico
- 細胞アッセイ
- 動物モデル
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