エネルギー消費と地球温暖化問題を中心にして、自動車の徹底的な低炭素化が求められている。その対応技術として電動化や水素利用の流れがあるが、二次電池の低いエネルギー密度、発電電源構成、コスト、信頼性、インフラなどの観点から根本的な課題解決ができるかは不透明な状況と予想される。よって、今後も輸送用動力源の主体であるエンジンの徹底的な低炭素化・クリーン化が、CO2排出量削減に直接的に寄与すると言える。そのような背景のもと、ガソリン・ディーゼルエンジンの双方において、高効率化とクリーン化の両立を実現しうる手段として予混合圧縮着火 (HCCI) 燃焼方式が注目されている。HCCIは、混合気を圧縮着火させるため、着火時期の制御や急峻な燃焼の抑制など従来方式とは異なる課題が存在する。これらの課題を克服する要素技術、デバイス、制御手法の開発のためには、燃焼及びエンジンの基礎に立ち返り、HCCI燃焼メカニズムを理解した上でのアプローチが重要と考えられる。
本セミナーでは、エンジンの効率向上、排ガス浄化の基礎に立ち返った上で、HCCIエンジンの特性と燃焼メカニズムをガソリン・ディーゼル燃焼と比較しながら議論する。さらに、HCCIエンジンの実用化に向けた課題と研究開発動向について紹介する。
- 自動車用パワートレインの課題と比較 (エンジン、HEV、EVなど)
- エンジンの高効率化の原理
- エンジンの熱力学
- 熱力学の基礎
- エンジンの熱力学サイクル
- エンジンの理論熱効率
- 理論熱効率の向上原理
- エンジン熱効率の支配因子
- エンジン性能を表現する基本指標
- 熱効率の向上法
- 各種損失とその低減法
- 有害排出ガスの生成機構とその低減法
- 有害排出ガスとその規制
- 燃費規制
- 測定方法・走行モード
- 有害排出ガスの生成・排出メカニズム
- 未燃炭化水素 (HC)
- 一酸化炭素
- 窒素酸化物
- 粒子状物質
- 炭化水素燃料の自着火特性と反応メカニズム
- 燃焼反応の基礎
- 水素・酸素燃焼における爆発半島
- 炭化水素の高温酸化反応メカニズム
- 炭化水素の低温酸化反応メカニズム
- 分子構造とオクタン価
- 予混合圧縮着火 (HCCI) 燃焼
- HCCI燃焼とは
- HCCIの利点と課題
- HCCI機関の特性
- HCCI機関の燃焼メカニズム
- HCCIエンジンの研究開発動向
- ディーゼルエンジンの予混合化
- ガソリンエンジンベースのHCCI開発 (火花点火アシストHCCIなど)
- HCCIに関連する高効率エンジン周辺技術
- リーンバーンエンジン
- 筒内成層直噴エンジン
- 過給ダウンサイジングエンジン
- 可変動弁技術
- 高圧縮比エンジン
- 可変圧縮比
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