第1部. 腫瘍内科から見る悪心の予防、治療
(2018年8月9日 10:30〜12:00)
第2部. がん化学療法に伴う悪心の評価とマネージメント ~薬剤師の立場より~
(2018年8月9日 12:45〜14:45)
がん薬物療法に伴い出現する代表的な副作用の一つに悪心・嘔吐がある。昨今、治療効果の高い制吐薬の登場により、嘔吐は軽減されつつある一方で、悪心はいまだに臨床現場で多く遭遇する有害事象である。悪心が持続すると脱水や電解質異常、低栄養を引き起こし、患者のQOLを著しく低下させるため、それらの予防と出現した際の対応がたいへん重要であり、悪心に対する薬物療法は欠かすことのできない治療ストラテジーの一角をなしている。
本セミナーでは、制吐薬適正使用ガイドラインに即した制吐療法について説明し、症例を通じて実臨床での制吐療法における薬学的介入を紹介予定である。これらの内容が、より有用な制吐薬や患者にとって利便性の高い製剤開発のヒントとなれば幸いである。
- はじめにおさえておくべきポイント
- 悪心・嘔吐のメカニズム
- 制吐療法へのサブスタンスPの応用
- 剤形の違う制吐薬をどのように使い分けるか
- 薬物間相互作用を考えて使用しなければならない制吐薬は何か
- 悪心・嘔吐の評価方法
- 制吐療法について
- 制吐薬適正使用ガイドラインについて (国内)
- 制吐薬適正使用ガイドラインについて (国外)
- 急性の悪心・嘔吐
- 遅発性の悪心・嘔吐
- 予期性の悪心・嘔吐
- 突出性の悪心・嘔吐
- 症例検討
- 症例提示① (大腸癌) 中等度催吐性リスクの制吐療法を考えてみる
- 症例提示② (乳癌) 予期性悪心・嘔吐を考えてみる
- 症例提示③ (胃癌) 抗がん薬以外の要因を考えてみる
- 症例提示④ (膵癌) その他
第3部. 悪心対策法の開発に向けた病態モデル動物の作成 – 病態評価の現状・課題と可能性 -
(2018年8月9日 15:00〜17:00)
悪心は「不快と感じるかどうか」と主観に影響される症状であるため、実験動物では評価できないと考えられていた。しかし、演者はラットやマウスの行動変化から動物の悪心を評価する手法を構築し、その発症機序を解明する研究に従事している。今回、その実験技術を含めて実験動物の悪心評価法の現状と課題、その可能性について紹介する。
- 悪心の発症機構
- 悪心とは – 嘔吐と何が違うのか -
- 悪心の神経機構とは – 悪心中枢は存在するのか?嘔吐中枢と異なるのか? -
- 刺激の違いによる発症機構
- 臨床で用いられている制吐剤は悪心の治療に用いることができるか
- ヒスタミンH1受容体、ドーパミンD2受容体、セロトニン5 – HT3受容体
- タキキニンNK1受容体、その他 (オランザピン・モサプリド・漢方薬)
- 実験動物における悪心評価法の現状と課題
- 悪心治療薬・制吐剤開発のための評価法
- 実験動物を用いた病態モデル
- 食肉目 – イヌ・ネコ・フェレット -
- 霊長目 – サル -
- 食虫目 – スンクス -
- その他 – ハト・ブタ・カエル -
- 現在用いられている手法の問題点と課題
- 齧歯目を用いた悪心・嘔吐の評価法の現状と課題
- 齧歯目が悪心治療薬・制吐剤開発の前臨床評価に用いられない理由
- 齧歯目を用いた悪心代替評価法の現状と課題
- 異味症 (パイカ行動)
- 胃通過時間測定法
- 条件付け味覚嫌悪学習
- 唾液アミラーゼ測定法
- 摂餌量測定
- 新しい評価法の探索とその課題
- 画像解析法 (体輪郭・表情)
- 新しい治療薬の可能性