近年の個別化医療では、臨床での薬の選択や創薬において、臨床バイオマーカーが重要になっています。更に、正常状態と病態の臨界状態、病態初期状態あるいは病態悪化の動的状態遷移過程をはっきり識別することが出来る動的ネットワークバイオマーカーを、複雑疾病の早期診断や病態悪化の予兆検出に広く適用することで、適切なタイミングで適切な個別化医療を行なうことが可能となるものと期待されています。
そこで、疾患状態で起こっている動的ネットワークのプロテインープロテイン相互作用 (PPI) のシステムを解明することで、その疾患のメカニズムが明らかになると同時に、このPPIが創薬のターゲットになるのではないかと考えられており、製薬各社はPPI阻害剤の開発に力を入れようとしている。このPPIの阻害剤として、最近は中分子化合物が有効ではないかと考えられています。
そこで、本セミナーでは、中分子化合物の創薬への必要性とその創薬開発の方法を、私の経験も含めて説明しようと考えています。
- はじめに
- 医薬品開発の現状
- 医薬品開発成功確率の過去と現在
- 医薬品の多様化
- 個別化医療と創薬
- 臨床現場と医薬品開発との間の大きな谷
- 臨床現場での医薬品選択の現状
- 科学的診断の重要性
- 動的バイオマーカーメカニズムの解明
- 疾患バイオマーカー探索の必要性とその方法
- 創薬ターゲットプロテインープロテイン相互作用の解明
- 疾患バイオマーカーから創薬ターゲットプロテイン探索
- プロテインープロテイン相互作用解析の手法
- クライオ電顕
- 核磁気共鳴 (NMR)
- 質量分析 (MS)
- プロテインープロテイン相互作用 (PPI) 阻害剤と中分子化合物
- なぜPPI阻害剤として中分子化合物が良いか
- 創薬に応用可能な中分子化合物ライブラリーは何か
- 中分子化合物を用いた創薬リード化合物の探索 (Screening)
- 中分子化合物は医薬品になるか
- 中分子化合物の体内動態と構造活性相関
- 中分子化合物は抗原抗体反応を起こし易いのか
- 低分子・中分子創薬の新しい考え方であるAntibody-drug conjugate (ADC) 製剤
- 今後の中分子化合物と創薬
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