治験の品質を確保するためのクオリティマネジメント (QM) 活動として、想定されるIssueのRisk/Impactおよび原因を分析、理解することによって、その後の運用に対する予防措置 (PA) と起こった問題に対する是正措置 (CA) を治験の具体的な運用事例からその解決策を解説する。
ICH-E6の改訂に伴った国内のGCP省令 (JGCP) ガイダンスの改訂 (補遺) では、治験におけるクオリティマネジメント (QM) が大きく取り上げられる。今後、治験依頼者によるQM活動が治験を運用する上で重要な課題となる。そのために治験依頼者は治験のQM活動を具体的な運用ベースで理解し、実装することが重要である。
ここでは、前半で治験おけるQM概念の解説と問題点の分析を行い、後半で想定される具体的な原因やRisk/Impactおよび問題事例に対する運用を解説することによって、Issue分析とCAPAマネジメントの実践的な運用知識の習得をねらう。
第1部 治験におけるクオリティマネジメント
- 治験における品質
- 規制要件と品質基準
- 計画の検証
- 実施体制の確立
- 要件との比較、リスクの予測と対応
- 教育訓練と割り当て, 力量管理
- 規定された手順 (書) の運用
- サポートシステム (ツール) の構築
- 環境整備:時間、人員、職場環境
- クオリティマネジメントのポイント
- 実施体制
- 文書作成と管理
- 実施部門と手順書
- 業務委託の管理体制
- CAPAの運用
- 定義
- 運用
- 治験で発生する問題のリスクとインパクトの評価
- 被験者の倫理性と福祉
- データへの影響
- 原因の究明
- 直接的な原因と間接的な原因
- 原因の分類
- 原因に基づいたCAPA対応
- 要件の再設定
- 共通したPA:実施体制の確立
- 時間的な考察
第2部 想定される問題とCAPA
~問題の影響、原因究明、リスクの予測~
- 手順 (書) からの逸脱:治験実施計画書、SOP、契約書
- 問題事例
- 実施計画書からの逸脱に対する依頼者による是正処置CA
- 依頼者におけるデータの取扱いと記録の作成
- 原因に基づいた他施設の状況確認と対応
- 実施計画書からの逸脱に対する医療機関による是正処置CA
- 被験者対応
- GCP、院内SOP、治験依頼者への対応
- 治験実施計画書、SOP、契約書からの逸脱に対する予防措置PA
- 原因の特定
- 要件の再設定
- 実施体制の確立
- リスクの予測
- 記録 (原資料、その他のデータ情報) の作成と保存
- 問題事例
- 記録の不備に対する是正処置CA
- 予防措置PA
- 原因の特定
- PAとしての実施体制の確立
- リスクの予測と対応
- 治験関係者の責務:Qualification、CRO管理
- 問題事例
- 治験関係者の責務の不備に対する是正処置CA
- 予防措置PA
- リスクの予測と対応
- 同意取得の手順
- 問題事例
- 同意手順の不備に対する是正処置CA
- 被験者への対応
- 医療機関内の対応 (被験者対応を除く)
- 治験依頼者への対応
- リスクの予測と対応
- スタッフの役割と運用、文書管理
- 実施要件と実施体制の比較