2017年は半導体メモリ市場が大爆発した。ビッグデータ時代を迎えて3次元NANDがつくってもつくっても足りない状態となり、サムスン電子、SK Hyynix、マイクロンの3社に集約されたDRAMメーカーが”緩やかな談合“を行った結果、DRAM価格が2倍以上に高騰したからである。2018年は、そのメモリ市況に変調が見られる。メモリメーカー各社がNANDの投資をDRAMに変換し始めたのだ。新聞は「NANDが調整局面に入った」と報じているが正しくない。真の理由は、中国が巨大DRAM工場の建設を3カ所で開始したことによる。この中国を脅威と捉えた既存DRAMメーカーが、微細化投資を加速し、中国を叩き潰す戦略に出たのである。
講演では、このような激動の世界半導体業界動向と共に、各種製造装置の市場規模や企業別のシェアを詳述する。また、今後、最先端の配線材料がCuからCoに替わり、バリアメタルにもCoが使われる最新動向をお話しする。最後に、昨年世間を騒がせた東芝メモリのその後の動向について報じる。
- はじめに (自己紹介)
- 本講演の概要と結論
- パラダイムシフトとイノベーション
- パラダイムシフトとは何か
- イノベーションとは何か
- 破壊的イノベーションとは何か
- 新市場型破壊と低コスト型破壊
- 年までの世界半導体市場予測
- 2012年に行った2050年までの世界半導体市場予測
- メモリ市場の爆発により、世界半導体市場予測が上方修正
- メモリ市場の爆発の次はプロセッサ (SOC) の爆発がやってくる
- 世界半導体製造装置市場の動向
- 2017年以降、製造装置市場は2000年のITバブル時の市場規模を超えて成長
- 2017年の要素技術毎の装置市場は全て前年比で二桁成長
- 2015年以降は露光装置市場を抜いてドライエッチ市場が最大規模に
- 要素技術毎のすべての装置市場規模と企業別シェアの動向
- 2018年はEUV露光装置・元年になるか
- なぜ3次元NANDのメモリセルの深孔はラムリサーチのエッチャーでなければ開かないのか
- 3次元NANDの生産を律速していたのは、2017年はドライエッチャー、2018年はCVD装置
- 洗浄装置でスクリーンのシェア低下は止ったか
- 全ての装置で「1強+その他」または「2強」の状況になった
- 今後台風の目となる中国半導体産業の動向
- 中国半導体市場の状況と課題
- 紫光集団傘下の長江ストレージの3次元NANDの状況
- 中国が3か所で巨大DRAMファブの建設中を開始
- 大物をヘッドハントした中国ファンドリーのSMIC
- 半導体大国への道を進み始めた中国
- メモリ市況変調の真の原因 (震源地は中国だった)
- 『NANDが調整局面に入った』 (日経産業新聞2月19日) は間違い
- なぜ2017年にDRAM価格が2倍以上に高騰したのか
- メモリメーカーがNANDの投資をDRAMに変換する理由
- グーグルやアマゾンがDRAMを求めてサムスン電子詣で
- 真の理由は既存DRAMメーカーが中国DRAMを叩き潰す戦略に出たため
- 2020年に生き残っているDRAMメーカーはサムスン電子だけかもしれない
- 最先端配線材料がCuからCoに変化
- 論文統計から見える技術動向
- なぜCu配線が使えなくなるのか
- 欧州のコンソーシアムimecのロードマップ
- インテルが10nmプロセッサにCo配線を使用
- IBMが開発したTa (N) /Coバリア
- 今後の微細配線およびバリアメタルの展望
- IoTおよびAI時代の半導体産業
- IoTの本質とは何か
- AIの本質とは何か
- IoTおよびAI時代に半導体産業はどうなるのか
- 装置、材料、部品メーカーはどう対応するべきか
- 装置、部材、設備、材料メーカーが生き延びるために
- あらゆるビジネスが提案型にパラダイムシフトした
- 提案するにはマーケティングが必要不可欠
- 何がイノベーションを妨げているのか
- 全員がマーケッターになれ
- 国際学会はマーケティングの絶好の機会である
- 昨年世間を騒がせた東芝メモリのその後の動向
- 東芝メモリの売却が無事完了
- 東芝メモリの本質的な課題は何か (“低成長”と“烏合の衆”)
- 東芝メモリがその課題を解決するにはどうしたら良いか
- 最先端3次元NAND (96層) における東芝メモリの状況と今後の期待
- まとめと提言