第1部 リチウムイオン電池の反応機構と反応不均一現象のメカニズム
(2018年6月8日 10:00〜12:00)
リチウムイオン電池は携帯用蓄電池として広く普及しており、自動車用途への大型化が進められています。しかし、複雑な反応機構故に、電池開発がトライ&エラーの要素が多く、性能向上のポイントは至るところに存在します。反応現象の本質的理解は、実用的な利用率向上だけでなく、用途に応じた電池設計の観点からも、今後のリチウムイオン電池開発にとって重要であります。
本セミナーではリチウムイオン電池の反応機構をミクロからマクロレベルまで解説した上で、実セルの性能に最も影響がある反応不均一現象について、最新の結果とともにそのメカニズムを説明します。
- 電池開発の現状とリチウムイオン電池における反応機構
- 高エネルギー密度化への取り組み
- 素反応から実用蓄電デバイスまでのマルチスケール反応の理解
- 電池作動中の反応を観測するための手法
- 放射光X線
- 利用方法
- リチウムイオン電池における適用例の紹介
- 放射光X線を用いた電池内部の測定方法
- 電極・電解質界面における反応
- 電極活物質の反応
- 電極における反応 反応メカニズム
- 実電池系における反応不均一性と性能
- 反応不均一現象
- 不均一現象の測定
- 不均一現象の発生メカニズム
- 反応不均一性と緩和現象
- 反応不均一現象発生因子の測定
- 電極内におけるイオン伝導度・電子伝導度解析
- 電極パラメータと伝導度の相関性
- 電極反応不均一性とイオン・電子伝導度との相関性
- 反応不均一性を引き起こす新たな因子
- 全固体電池における反応分布
- 最新の研究結果のうち、特に性能に影響を与える因子についての解説
第2部 二、三元系リチウムイオン高容量正極材の開発とEV用電池への適応プロセ
(2018年6月8日 12:45〜14:45)
本講ではリチウムイオン電池の主役である高性能正極材の現在の状況を、大型電池 (セル) の設計と製造の立場から扱ってみたい。中国がその新エネ車 (EV) の拡大にあたって、高容量の多元系正極材を排除して、放電電圧の低い、鉄リン酸リチウム (LFP) に限定したことは記憶に新しい。政治的な背景や安全性への危惧もあろうが、いずれは多元系正極材による比容量 (Wh/kg (L) ) の高い電池を採用しないと、500~800km超の走行距離は達成出来ない。
Coを含む正極NMCなどが、コスト的に、資源的に今後のEVへの全面採用に可能か。あるいはNM系の高電圧系の方がむしろ有利なのか。研究や開発は多いが、なかなか実際の判断情報は集まり難い。第二部では上記の諸課題を、実用リチウムイオン電池の範囲で、いくつかのトピックスを交えて解説したい。
- リチウムイオン電池における正極材のポジション
- 年代の探索研究と成果レベル
- 年代の高容量化正極材
- 年~理論の拡大と次、次世代正極材の方向
- 最近の研究データから実用性のシュミレーション
- 研究開発から実用セルへのステップ
- EVにおける正極材の選択と諸問題
- トピックス
- 実用電池の充放電とサイクル特性
- 多元系正極材の特許問題
- 正極材のモルフォロジーと電極板製造
- 5V系の電解液と高圧充電の問題点
- 世界のEVの年間生産台数 (万台/年) 試算
- 世界のEV台数に対する正極剤の供給量試算
第3部 正極集電体/水系バインダーの接触とリチウムイオン二次電池の信頼性
(2018年6月8日 15:00〜17:00)
電池の原理をおさらいし、電極内部や集電体表面におけるバインダーの役割を理解し、実際の電池の設計に役立てること。
- リチウムイオン電池の構造と電極中の電気の流れ方
- 電池の基本とその原理
- 電池から電気が取り出せるということ
- リチウム電池電極内部の電気の流れ
- 活物質、集電体、導電助材、電解液の役割
- 内部抵抗とサイクル特性
- 電極中のバインダーの役割と電池性能
- 材料の電気物性と極性
- 材料の粉体特性と合材の分散・塗布・乾燥
- 溶剤系バインダーと水分散系バインダー
- 材料混合の順序とバインダーの選択と電池性能
- バインダー役割と電池性能
- 正極集電体と合材との接触抵抗とサイクル劣化
- 交流インピーダンス法によるバインダーの評価
- 交流インピーダンス法によるスラリー乾燥過程の導電ネットワーク解析
- 集電体へのバインダー関与と電池性能
- 集電体界面の密着性と内部抵抗
- バインダーや分散剤が内部抵抗やサイクル劣化に及ぼす影響