片頭痛の診断・治療と薬剤選定の実際

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第1部. 神経内科における片頭痛の診断・治療と薬剤選定の実際

(2018年5月31日 10:00〜12:00)

 頭痛発生のメカニズムに関しては、頭蓋血管の異常を重視する血管説が広く信じられてきた。即ち、片頭痛の前兆aura の時には血管が収縮し、その後、血管が拡張して頭痛が生じるという説である。しかし近年、脳血流動態などの詳細な検討により、片頭痛の病態はむしろ” spreading depression (SD) “という大脳皮質の神経細胞の過剰興奮によると考える説 (神経説) が登場し、様々に議論されてきた。さらに,三叉神経と頭蓋内血管、特に硬膜の血管との関係に注目し、この “trigeminovascular system” を介する神経原性炎症は片頭痛のモデルになりうると考え、三叉神経血管説が提唱されている。  近年開発された5HT1B、5HT1Dの agonist である トリプタンは頭痛期の片頭痛患者の60 – 70%に有効であり、セロトニンとの関係が注目されている。一方、予防薬としては、カルシウム拮抗薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、βブロッカーなどが用いられてきた。最近、抗CGRP抗体が注目され、4種類の薬剤の治験が行われている。  群発頭痛においても、三叉神経第1枝と蝶形口蓋神経節と上頚交感神経節からの線維が収束する海綿静脈洞付近の内頚動脈周囲に原因があるとの説があったが、PETを用いた研究により、視床下部後部に代謝亢進部位がみられることも明らかになった。  また、主に片頭痛の難治性患者で使用過多による頭痛 (薬物乱用頭痛) がみられることが注目されている。この薬物乱用頭痛は脳のCentral Sensitizationとの関係で注目され、この病態に対する対策も検討されている。

  1. 頭蓋内外の痛覚感受部位
  2. 頭痛の国際分類
  3. 片頭痛、緊張型頭痛などの特徴
  4. 片頭痛の病態生理
  5. 血管説、神経説、三叉神経血管説
  6. Cortical Spreading Depression (CSD)
  7. 家族性片麻痺性片頭痛
  8. 神経ペプチド (CGRPなど)
  9. 抗CGRP抗体
  10. Migraine Generator
  11. トリプタン
  12. 5HT1B、5HT1D
  13. 片頭痛の予防的治療
  14. 薬剤の使用過多による頭痛 (薬物乱用頭痛)
  15. Central Sensitization
  16. 三叉神経・自律神経性頭痛 (TACs)

第2部. 片頭痛の診断と治療のポイント

(2018年5月31日 12:45〜14:45)

 片頭痛は頭痛と悪心、嘔吐、光過敏、音過敏などの随伴症状により生活に支障をきたす発作を繰り返す頭痛性疾患である。診断と分類は国際頭痛分類第3版に従って行われ、前兆のある片頭痛と前兆のない片頭痛に大別される。大部分の患者の生命を脅かすことはないが、日常生活に支障をきたし、身体面、心理面、社会的側面において幅広く機能障害を生ずる。急性期治療の目的は迅速な鎮痛効果の発現と随伴症状の消失により、通常の日常生活が営める身体的状態に速やかに回復させることで、鎮痛薬、非ステロイド性消炎鎮痛薬、トリプタン、エルゴタミン、制吐薬などが用いられる。急性期治療のみで十分に生活の支障が取り除けない場合には、予防療法を実施する。慢性片頭痛、薬剤の使用過多による頭痛 (薬物乱用頭痛) があれば早期に予防療法を検討する。ファーストラインはバルプロ酸、ロメリジン、プロプラノロール、アミトリプチリンであり、患者の共存症、既往歴、嗜好を考慮し、選択する。単剤で開始することを原則とし、有害事象がない限り十分量まで増量する。有効性は少なくとも2 – 3ヵ月は使用し、頭痛ダイアリーなどを用い客観的に判定する。4剤以上試みても十分な効果が得られない場合は難治例で、治療は確立したものはなく、各々のドクターが手探りで治療している。

  1. 片頭痛の診断
  2. 片頭痛急性期治療薬の使い分け
  3. トリプタンの正しい服用させるための指導
  4. 月経関連片頭痛の特徴と治療
  5. 妊娠・授乳中の片頭痛の特徴と適切な治療
  6. 片頭痛の予防療法の適応
  7. 予防療法に使用される薬物の使い分け
  8. 薬物療法以外の片頭痛治療
  9. 慢性片頭痛/薬物使用過多による頭痛 (薬物乱用性頭痛) について
  10. 難治例に対する治療の試み
  11. 今後の片頭痛治療薬

第3部. 心療内科における片頭痛の診断・治療と薬剤選定の実際

(2018年5月31日 15:00〜17:00)

 心療内科には様々な身体症状を訴える患者が受診する。前勤務先の大学病院心療内科外来での全数調査 (n = 1、023) によると (Nakao M、 et al. Psychother Psychosom 2014; 83:120 – 1) 、週1回以上の頭痛を訴える患者の割合は29%で、毎日頭痛を訴える者は9%であった。心身症とは、身体疾患の中でも発症や経過に心理社会的ストレスが密接に関与し、器質的ないし機能的障害を認められた病態である。片頭痛はストレスの影響を受けることが知られており (Cha MJ、 et al. Pain Med. 2017 Nov 2) 、広い意味で心身症の1つと捉えることができる。また、片頭痛は国際頭痛分類第3版の診断基準に基づいて診断されるが、その診断は問診による患者の返答や、頭痛日記などに頼らざるを得ないため、患者の性格特性や気分状態、身体感覚への過敏度によって大きな影響を受ける。治療においては、トリプタン系の薬剤を中心とした薬物慮法が確立されているが、認知行動療法やリラクセーション指導といった非薬物療法も注目されている。

  1. 心療内科における心身症の評価
  2. 身体感覚過敏 (somatosensory amplification) の影響
  3. 「機能性身体症候群」の中での片頭痛の位置づけ
  4. 心療内科における片頭痛の診断の実際
  5. 心理社会的ストレスの評価
  6. 気分状態の影響
  7. 考慮すべき性格特性
  8. 自殺リスクの評価の重要性
  9. 増悪因子としての不眠
  10. 心療内科における片頭痛の治療の実際
  11. 薬物療法 (急性期治療薬、予防薬)
  12. 非薬物療法 (認知行動療法、リラクセーション指導)
  13. 症例提示 (薬剤選定の実際)
  14. 考察とまとめ

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