これまで炭素繊維強化プラスチック (CFRP) は、軽量化による燃費の大幅な向上が期待される航空機に使われてきた。2010年代に入ってからは、様々な電子機器を装備した高級車や、大量の蓄電池を積んだ電気自動車などの軽量化のためにも使われるようになった。その結果、炭素繊維 (CF) は最近5年間で約2倍の生産量となり、それに伴って使用済みCFRPおよびCF生産工程廃材も大幅に増加している。また、CFを用いた輸送機器は軽量化でき燃料は節約できるが、CFを製造する際には長時間高温で焼成するため、多量のエネルギーを必要とし、環境影響評価 (LCA) の結果では環境によい材料ではないとされる。長距離を走る商業用輸送機器でのみ効果が得られるという東京大学の高橋らの試算がある。その対策としては、使用済みの輸送機器から回収したCFを、同種の輸送機器に再利用することが最良の方法としている。
本セミナーでは、国内並びに国外におけるCFRPのリサイクル技術の最新動向を紹介する。
- 緒言
- 国内のCFRPリサイクル技術の動向
- 国家プロジェクト
- NEDO「革新的新構造材料等研究開発」
新構造材料技術研究組合 (ISMA) と東京大学
- 経済産業省「2010年度 (2010年度) イノベーション拠点立地支援事業」
名古屋大学ナショナルコンポジットセンター (NCC)
- 文部科学省「地域資源等を活用した産学連携による国際科学イノベーション拠点整備事業」
金沢工業大学革新複合材料研究開発センター (ICC)
- 地方公共団体の動向
- 愛知県:「知の拠点あいち」重点研究プロジェクト
- 福島県:「ふくしま環境・リサイクル関連産業研究会」
- 広島県:広島県立総合技術研究所「炭素繊維複合材料利用研究会」
- 福井県:福井県工業技術センター「ふくいCFRP研究開発・技術経営センター (FCC) 」
- 大学等の動向
- 東京工業大学 久保内教授 硝酸分解法
- 静岡大学 岡島准教授 亜臨界流体法
- 熊本大学 (現在は名古屋大学) 後藤教授 亜臨界アルコール法
- 八戸工業高等専門学校 杉山教授 電解酸化法
- 信州大学 水口特任教授 半導体分解法
- ファインセラミックスセンター 過熱水蒸気分解法
- JAXA 回収CF再利用技術
- 民間企業等の動向
- 炭素繊維協会 熱分解法
- 東レ 株式会社 熱分解法
- 三菱ケミカル 株式会社 熱分解法
- 日立化成 株式会社 常圧溶解法
- 阿波製紙 株式会社 CF製紙技術
- 高安 熱分解法
- カーボンファイバーリサイクル工業 株式会社 熱分解法
- ACA 株式会社 空気流によるCF回収技術
- 海外のCFRPリサイクル技術の動向
- 欧州
- ELG Carbon Fibre Ltd. 英国 熱分解法
- Karborek/ENEA イタリア 熱分解法
- Nottingham 大学 英国 超臨界流体法
- Siemens ドイツ 加溶媒分解法
- Imperial College London 英国 熱分解法回収CFの用途開発
- CFK Valley (研究開発クラスタ) ドイツ 熱分解法回収CFの用途開発
- SGL ACF/BMW ドイツ 熱分解法回収CFの用途開発
- IPC / CReCoF フランス 複合材料リサイクルに関するガイドブック
- 米国
- Adherent Technologies, Inc. 真空熱分解法,溶媒分解法
- MIT LLC CF工程廃材の用途開発
- North Carolina 州立大学 回収CFの評価
- Washington State University 超臨界流体法
- Dell Ink./SABIC CF再利用技術
- CRTC 回収CFのPickleball Paddle,ベンチへの適用
- Steelhead/Vartega/Michelman 回収CFを用いた圧力容器
- 中国
- 寧波材料技術與工程研究所 DMF/H2O2水溶解法
- 中国科学院大学 AlCl3/酢酸溶解法
- 深セン大学 電気化学法
- Adesso Advanced Materials Wuhu Co., Ltd. 電気自動車への回収CFの適用
- 今後の技術課題
- 回収技術
- 加工技術
- 製品適用技術
- 結言