多くの臨床試験では、評価対象となるアウトカムを同一被験者に対して、経時的に繰り返して測定します。このようなデータを経時測定データといいます。例えば、高血圧患者を対象とした臨床試験では、介入前、介入4週、8週、12週後の各時点で血圧値を測定するといった具合です。経時測定データは、データの性質上、単純なt検定や分散分析といった古典的手法で解析するのは適当ではありません。また、被験者が途中で脱落したり、特定の時点で来院しなかったり、という問題が頻発するため、試験実施計画時に定めた時点できちんとデータが得られず、データの欠測が生じます。データ欠測は、臨床試験の結果の信憑性を損ないかねない極めて深刻な問題です。欠測が問題となり、医薬品の承認に至らなかったケースもあります。 本セミナーでは、臨床試験で使用される経時測定データ解析のための統計手法を解説します。事例を通じて、経時測定データの性質や特徴を説明します。そのうえで、臨床試験で使用頻度の高い統計手法を紹介し、解析結果の適切な解釈法を説明します。また、欠測値が生じにくくなる工夫、欠測値が生じたときの対処法等も解説します。 本セミナーは、メーカー、CRO、ARO等でプロジェクトマネージメント、臨床開発、データマネージメント、統計解析、メディカルライティング、市販後調査、薬事等を担当している方を対象としています。経時測定データは、臨床試験から得られる典型例です。実際に自分でデータ解析を行わない方も、試験実施計画書や総括報告書の作成・読解、規制当局からの指摘事項対応等に携わる限り、経時測定データ解析のための統計手法の意味をきちんと理解し、解析結果を正しく解釈できる必要があります。また、世界で最も権威のある一般臨床医学雑誌New England Journal of Medicineでデータ欠測に関する特別論文1) が発表されました。欠測の問題は、統計学専門家だけが知っていればよいものではありません。
1) Little RJ et al. The prevention and treatment of missing data in clinical trials. New England Journal of Medicine 2012; 367:1355年〜1360年.