わたしたちは日々の生活の中で連続的に意思決定を迫られます。おやつを買う、着る服を選ぶ、といった比較的些細な意思決定から、仕事上の大きな取引、配偶者の選択、といった人生をも左右する意思決定まで、その種類は多岐にわたります。
本講演では、最新の脳科学・心理学の知見から明らかとなっている、ヒトの意思決定の基礎的メカニズムを概説します。特に、ヒトの意思決定には数多くのバイアスが存在し、合理的で柔軟な意思決定を行うことが想像以上に困難であることを、具体例を交えながら紹介します。さらに、そういった意思決定に潜む罠を回避し、より良い意思決定を実現するための方策を議論したいと思います。
- 意思決定のメカニズムの基礎
- 二重過程理論における理性と感情 – 意思決定を支える二種類のこころのはたらきと脳のしくみ
- おやつを我慢する – 「マシュマロ実験」の成果から見る自制心の発達
- 我慢できる子とそうでない子の違い – 40年にわたる追跡調査の結果
- 「時間割引」 – 今の1,000円より明日の1,100円を選ぶのか?
- 道徳的意思決定を担う脳のはたらき – 5人を救うために1人を犠牲にできるのか?
- 感情より理性が優位な場合の道徳的意思決定 – 熟考モードに入る時・お薬の効果等
- 理性より感情が優位な場合の道徳的意思決定 – 時間的プレッシャー・疲労による判断力への影響等
- 意思決定に潜む罠
- 損失回避性とフレーミング効果 – 1,000円得する喜びよりも1,000円損する悲しみの方が大きい
- 確証バイアスとサンクコスト (埋没費用) – 一旦決断したり、コストをかけるとやめられない
- 保有効果と現状維持バイアス – 買い換えたくない心理
- 雪だるま式に誘惑に負ける時 – 「どうにでもなれ」効果
- 後知恵バイアス – 「わたしもトランプが勝つと思っていました」は本当か?
- 内集団バイアス・優越の錯覚・楽観主義バイアス – 「わたし/わたしたちは優れている/恵まれている」
- より良い意思決定の実現に向けて
- 理性がはたらく時とはたらかない時を見極める
- 欲求・感情には真っ向勝負では抗えない – 気をそらす・抽象化する・「if – then」プランを作る
- 時と場合によっては直感に委ねる – 問題解決や「仲間」との協力が必要な時
- 俯瞰的に二種類のこころのはたらきを利用する