製品開発中に品質上のトラブルが発生したり、量産後に市場問題が起こると、その対策に多くの時間やコストが費やされ、企業の業績にも影響します。個別の防止策は部分的なものになり、未知の問題には対応しきれません。技術やシステムが新しくなると次々に新たな問題が発生し、対策のための作業量が増大していきます。
個々の問題対策の前に、開発・設計段階で製品というシステムをトラブルが起こりにくい頑健な (ロバストな) 体質にすることが重要です。品質工学を導入し、ロバスト設計 (パラメータ設計) を実践することによりこれを実現し、問題対策の作業量を削減することができます。長期的には、魅力ある製品を低価格でタイムリーに市場に提供できる企業体質に変革させることにつながります。
本講座では学問体系としての品質工学ではなく、開発実務で役立つ品質工学を習得していただくことを目的にしています。そのため、ロバスト設計という分野を中心に、その基本概念、方法論、実務への適用方法を解説します。
- はじめに
- 本講座の狙い
- 品質工学とは
- 製品の不具合とその対策
- 一般的な方法
- 従来の未然防止の方法 (FTAとFMEA)
- 品質工学の考え方
- 品質工学におけるシステム (技術、製品) のとらえ方
- システムの機能
- システムを構成する因子
- システムの外部の因子
- ロバスト性と不具合
- 不具合はなぜ起こるか
- 誤差因子の種類
- 外乱 (外部環境、ユーザー使用条件など)
- 内乱 (部品劣化など)
- 部品のばらつき (製造起因)
- 誤差因子の影響を最小化する (ロバスト設計)
- SN比とは
- 原則:ロバスト性を測る尺度
- 静特性
- 動特性
- 機能性評価とその意味
- 目的
- 実施方法
- 実験の割り付けと直交表
- 実験の割り付け
- 直交表とは
- 直交表の使い方
- 主効果と交互作用
- 割り付け時の注意
- 直交表実験の解析 (演習1:直交表解析方法)
- ロバスト設計 (パラメータ設計) の手順
- 対象システムの明確化
- 評価特性の設定
- 誤差因子の設定
- 制御因子の選定と実験の割り付け
- 実験の実施とデータ解析
- 最適条件と比較条件の選定
- 推定と確認実験
- 結果の考察と結論
- 補足事項 (演習2:実験計画)
- 事例紹介
- おわりに