2030年以降、エンジン車を廃止するという中国、ドイツ、イギリス、フランス政府発表を契機に、今後電気自動車や燃料電池車が次世代自動車の主流を占めるのではという報道がなされていますが、それぞれの技術的難易度のみならず、インフラ整備など先進国においてさえも解決すべき課題が依然多いです。
一方、年間一億台近い新車販売台数のうち新興国が60%以上を占めているのも事実です。地産地消の観点で使用燃料の多様化を考えることとあわせ、さらなるエンジン効率の向上が重要となってきています。
本セミナーでは、始めに自動車を取り巻く環境、エンジンの基本構造・サイクル理論から理解して頂きます。その上でエンジン改良における技術課題をエネルギーの損失という観点で整理し、ガソリンエンジンでは希薄燃焼/高圧縮比化、ディーゼルエンジンでは低圧縮比化/低スワール化をKey技術として、これまで開発されてきた技術と燃費改善効果、さらには将来の熱効率50%Overに向けたエンジンの最新技術動向、および将来の動力源の棲み分けについて解説します。
- 自動車を取り巻く環境
- 地球温暖化、エネルギーセキュリティ、大気汚染という課題に対して、自動車がどのように対応すべきかわかりやすく解説します。
- エンジン開発のこれまでの取り組み
- 130年の自動車の歴史の中で、ここ50年間自動車の進化は目を見張るものがああります。これらは材料技術や加工技術、触媒技術、電子制御技術 (各種センサーを含む) の発展によるところが大きく、これまでガソリンエンジンとディーゼルエンジンは共に、動弁系や噴射系、触媒系、制御系などに関する先進技術開発を行ってきました。
本章では燃焼の基本的な考え方も踏まえ、これらの技術による出力性能や燃費性能、排ガス性能の改良効果と、ハイブリッド車用エンジンにおける新たな改良技術、エタノールや天然ガス (CNG) 水素といった燃料多様化への対応技術に関して解説します。
- エンジンの歴史
- ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの構造の違い
- エンジンのサイクル理論と熱効率
- オットーサイクル (ガソリンベース)
- サバテサイクル (ディーゼルベース)
- エンジン内のエネルギー損失
- 冷却損失
- 排気損失
- ポンピング損失
- 機械損失の割合と低減手段の概要
- ガソリンエンジンの基本とキー技術
- ガソリンエンジンの燃焼の基本
- 混合気形成 (空気流動、噴霧)
- 火炎伝播
- 空燃比と排出ガス成分
- ガソリンエンジンの先端技術開発
- 直噴
- 可変動弁系
- 希薄燃焼 (均質、成層)
- 点火システム
- 3元触媒 等
- ディーゼルエンジンの基本とキー技術
- ディーゼルエンジンの燃焼の基本
- ディーゼルエンジンの先端技術開発
- 低圧縮化
- コモンレールシステム
- 高過給ターボシステム
- De – NOx触媒等
- 代替燃料車の技術開発
- CNG車対応 (バイフューエルシステム)
- FFV対応 (フレックスフューエルビークル E100/E85)
- ハイブリッド車用エンジンの技術開発)
- アトキンソンサイクル (高膨張)
- クールドEGR等
- 各種動力源 (各種エネルギー) におけるWell to WheelによるCO2の考察
- エンジンの将来に向けた技術開発
- 今後の自動車は、従来のガソリン車やディーゼル車に加えて、ハイブリッド車 (HV) 、電気自動車 (EV) 、燃料電池車 (FCHV) と多様化していきます。
ただし、世界の自動車生産台数は2020年に年間1万台を超え、その60%が新興国と予想されることなどを考えると、今後も主流は内燃機関であり、改良の余地はまだまだ残されています。また内燃機関用の燃料もガソリン、軽油からバイオ燃料、天然ガス、水素燃料に転換し、CO2の大幅低減効果が期待できます。
本章では燃費改良技術にフォーカスし、ガソリンエンジンに関しては、高圧縮比化、可変圧縮比化、超リーンバーン (含むHCCI) 、エンジン断熱、ヒートマネージメントなどの新技術に、過給、高膨張サイクルを含め、これらをどのように組み合わせて熱効率50%の道筋を立てていくか、一方ディーゼルエンジンに関しては、低圧縮比化、燃焼室内低流動化、大量クールドEGR、予混合燃焼 (PCCI) 、ピストン断熱などの技術をどのように組み合わせて熱効率50%の道筋を立てていくかについて解説します。
- 燃焼技術のトレンド (特許調査から)
- 日本は希薄燃焼、HCCI、PCCI、欧米はHCCI、希薄燃焼、ガソリン高圧縮、ディーゼル低圧縮での出願数が多い。
- 将来ガソリンエンジンの熱効率改善シナリオ
- Key技術として、高圧縮比、アトキンソンサイクル (高膨張) 、超リーンバーン、可変圧縮比、高エネルギー点火、超断熱 (ヒートマネージメント) 、大量クールドEGRを取り込むシナリオとなる。
具体例として以下について解説する。
- 高圧縮比化 – ノッキング発生メカニズムとその対応 -
- 圧縮比とノックの関係、点火システム強化、圧縮比と乱れと燃焼速度の関係
- 超リーンバーン化 メリットと課題、HCCIへの展開
- 可変圧縮比 – 燃費と出力性能の両立 -
- ヒートマネージメント – 熱損失の低減あるいは有効活用 -
- シリンダ壁断熱とアトキンソンサイクルの活用による熱効率改善
- ヒートパイプ活用による低温時機械損失の低減
- 過給スカベンジング – バルブオーバーラップ間の掃気 -
- アトキンソンの充填課題である全負荷性能低下の改善
- 高圧縮比化に伴うノック発生の抑制
- 将来ディーゼルエンジンの熱効率改善シナリオ
- Key技術として、低圧縮比、アトキンソンサイクル (高膨張) 、低流動、ピストン断熱 (ヒートマネージメント) 、PCCI、超高圧コモンレールシステム、大量クールドEGRを取り込むシナリオとなる。具体例として以下について解説する。
- 低圧縮比化のメリット – 出力性能、燃費、NOx、PM改善 -
- 低圧縮・低流動燃焼における多段噴射 (2~4段) +PCCI燃焼との組み合わせ効果
- 熱効率改善と大量EGR時の壁面クエンチ抑制 (CO、HC抑制)
- 低NOx領域の拡大 – MPL-EGR、2 – Stage Turboの効果 -
- 将来の自動車の動力源の展望およびまとめ