本セミナーでは、磁場により粘弾性が変化し、他の刺激応答性ゲルと比べて発生力が強く応答速度も速い、磁性ソフトマテリアルについて基礎から解説いたします。
構造や磁気粘弾性効果の原理、アクチュエータ・力触覚提示デバイス・振動制御材料等への応用について解説いたします。
磁性ソフトマテリアル (magnetic soft material) は高分子材料に磁性粒子や磁性流体などの磁性体を複合化させた材料である。高分子材料には高分子ゲル (polymer gel) 、エラストマー (elastomer) などのソフトな材料が用いられ、磁性粒子には主として鉄系粒子が用いられる。 磁性ソフトマテリアルに均一磁場を与えると硬さが変化し、磁場強度に空間的分布がある磁場を印加すると磁場に応答して伸縮運動や回転運動などのアクチュエーションを示す。他の刺激応答性ゲルと比較して、発生力が強いこと、応答速度が速いことが特徴である。磁性粒子の磁気特性を活用できることも大きな特徴である。磁場によって硬さが変化する現象 (variable elasticity) は振動制御アクチュエータや力覚提示アクチュエータへの応用が期待されている。また、残留磁化を持つ粒子を用いると、永久磁石で伸縮するアクチュエータができる。 “柔らかい”特徴をもつ磁性ソフトマテリアルは、人間に優しいソフトアクチュエータ、ソフトインターフェイス、高効率なソフトマシンに応用できると考えられている。数百倍の弾性率変化を示す材料は数年前に著者らのグループが開発したもので、現在さまざまな分野で応用研究が進んでいる。磁場で駆動するソフトアクチュエータの伸縮運動、回転運動、可変粘弾性などの機能について解説する。