機械・構造物を安全に使用するための設計・製作、または機械・構造物を安全に使用・維持するための保守・保全を行うためには、それらの部材として多用されている金属材料の疲労破壊について知ることが重要です。しかし、最近、大学や専門学校等で材料力学や材料強度学が教えられる機会が少なくなってきており、そのため、ものつくりの現場では耐疲労設計を含め、強度設計ができない若い技術者が出始めていて困っているということをよく耳にします。
本講義では、主に金属材料の疲労破壊のメカニズムと破面解析の基礎について学びます。まず、疲労とは何か、何が原因で起こると考えられるかなど、金属材料の疲労に関する基礎知識の復習から始め、疲労破壊のメカニズム、疲労破壊寿命予測法および疲労破壊を診断する破面解析等について学びます。
本講義が日頃の機械・構造物の設計業務、保守・保全活動の向上にお役に立てれば幸いです。
- はじめに
- 金属疲労のメカニズム
- 金属疲労の基礎
- 静的破壊と疲労破壊の違い – 入込みと突出し -
- 金属の疲労破壊の事例とその原因
- 事故統計
- 金属疲労のメカニズム
- 金属疲労による破壊過程
- 疲労き裂の発生と成長
- 疲労強度の評価と寿命予測 – S-N線図 -
- S-N線図に及ぼす諸因子の影響
- 平均応力の影響 – ガーバー線図 -
- 切欠の影響 – 応力集中係数と切欠係数 -
- 疲労き裂の停留現象
- 組合せ負荷 (多軸応力) の影響
- 腐食の影響
- 温度の影響
- 金属疲労における寿命予測
- S-N線図による寿命評価
- 日本機械学会基準による確率的S-N線図の求め方
- 設計係数 (安全係数)
- 設計疲労曲線
- 実働荷重下の寿命評価と耐疲労設計
- 変動応力振幅疲労
- ランダム疲労
- 線形累積被害側 – マイナー則 -
- 組合せ負荷
- 疲労き裂の取扱い
- き裂発生寿命と進展寿命
- 破壊力学的取扱い
- 応力拡大係数
- 疲労き裂進展特性 – パリス則 -
- 微小き裂問題
- クラック・アレスト
- 金属疲労における破面解析
- 破面解析の基礎
- 破面解析の意義
- 主な破面観察機器
- 金属顕微鏡/デジタル顕微鏡
- レーザ顕微鏡
- 走査型電子顕微鏡 (SEM)
- 透過型電子顕微鏡 (TEM)
- 主な破面解析技術
- プラスチック・レプリカ法
- ステレオ写真法
- フラスタ解析
- 電子機器
- 代表的な疲労破面
- 疲労破面の特徴
- 第Ⅰ段階の疲労破面
- ストライエーション – き裂進展挙動の推定 -
- 荷重変動による破面の変化
- 疲労破壊事故における破面解析事例
- 航空機の疲労破壊
- 車軸の疲労破壊
- コイルばねの腐食疲労破壊
- はんだ接合部の疲労破壊
- 銅配線の疲労破壊
- おわりに