近年、マイクロ波照射下の化学合成の研究が盛んになり、多数の検討例が報告されている。従来の熱媒加熱をマイクロ波照射に代替する優位点として、反応時間の短縮化や使用エネルギー量の低下などが行えるなどの生産性に関する例が挙げられる他、電源遮断による緊急停止時の除熱が速いなどの利点もある。一方で、化学プロセスにおける電磁気学の理解は十分でなく、取り組みは敷居が高いと考えられている。
本講演では、化学屋が知りたい電磁気学、化学屋に知っていて欲しい電磁気学について講演を行う。
- マイクロ波とはなにか
- 電磁波としての性質
- エネルギーとしての性質
- オーブンの中にある「マイクロ波」をイメージする
- 法律上の制約と市場による制約
- 波の伝わり方
- 電場と磁場は表裏一体
- 池に蛙が飛び込めば波ができる
- コップの水にストローを挿すと曲がって見える
- コップの水にレーザーを当てると
- コップの水にマイクロ波を当てると
- 電車の窓から外を見ると
- マイクロ波加熱の原理
- 単位を整理する
- 屈折率と吸収率
- マイクロ波における「屈折率と吸収率」
- なぜ誘電率は「比」なのか
- なぜ誘電率は「複素数」なのか
- キーワード1:伝搬と減衰
- 波が短くなるが時計は変わらない
- 電界の作用と磁界の作用は似ているが同じではない
- 双極子と誘電率
- 単電荷と導電率
- マイクロ波の形
- 強弱の分布を示す
- シミュレーションの示す意味
- 進行波 (波動) と定在波 (振動) の違い
- 照射したエネルギーは別れたり合わさったり
- マイクロ波は当たっていたの?
- キーワード2:反射と透過
- 物質定数の測定方法
- 誘電率の測定原理 (反射プローブ法、摂動法)
- 誘電率は周波数によって違う
- 誘電率は温度によって違う
- 誘電率は形によって違う? (相、形状、サイズ)
- 誘電率は周りによって違う? (混合)
- 一般的な有機溶剤の誘電率
- マイクロ波の装置
- マイクロ波発振器の進歩 (マグネトロンvs.半導体)
- コンポーネントの個別の役割
- 内部の温度を測るには
- 内部の様子を観察するには
- オールインワン装置
- 少量試料に照射する時の注意点
- 大量試料に照射する時の注意点
- フロー系反応装置
- 化学反応への展開
- 「マイクロ波効果」を議論する
- 国際化した「説明しがたく、無視しがたい」議論
- マイクロ波でなければできない立体選択反応
- 深く考えなくても「加熱できる」利点を使う
- 分子から細胞への展開:生体に対する影響はあるか
- まとめと提言