流体力学は水や空気にとどまらず、極めて多数の粒子集団の巨視的な運動を流れる連続体と見なして理解し説明し社会に役立てる学問体系です。対象となる集団の詳細にはよらないため、流体力学が取り扱う対象は航空・船舶・機械・土木・建築・気象・海洋はもとより天文・医学・生物学・エネルギーなどの極めて広い分野にわたります。
本講座では流体力学への入門的講義を行います。プログラムは、流体力学を学ぶ機会がこれまでなかった、もしくは再度学び直したい、あるいは十分に習得できていないが業務や研究で流体力学を必要としているという方を対象に、流体力学の基礎から初歩的応用に至るまでを短期間に習得できるように構成してあります。皆様のご参加をお待ちしております。
- Part 1
- 流体運動の記述方法
- 流体とは何か (身近な流れ、巨視的可視化による流れ)
- オイラー的記述 (流体力学の基盤)
- ラグランジュ的記述 (言うに易く行うは難し、最先端の計測技術が拓く新境地)
- 基礎方程式
- 保存法則 (万物は流転する 変わらないものはなにか)
- 質量保存の法則 (無から有は生まれず逆も真なり、連続の式)
- 運動量保存の法則 (原理は単純、ニュートンの法則)
- 流体に働く力 (面積力と体積力)
- 流体の運動学
- 流線、流跡線、流脈線 (流れの巨視的振る舞いを読む方法)
- 渦度、循環、ひずみ速度 (流れの微視的振る舞いを知る方法)
- Part 2
- 非粘性流体の力学
- オイラー方程式 (元祖流体力学、ミレニアム問題)
- ベルヌーイの定理 (オイラー方程式の積分、トリチェリの定理、管路、オリフィスとノズル、ベンチュリー管、ピトー管、圧力損失)
- 運動量の法則 (壁にあたる噴流、ジェットエンジン、風車)
- Part 3
- 粘性流体の力学
- 再び面積力 (面の向きと大きさ、応力の表し方)
- ニュートン流体 (ひずみ速度、せん断応力、粘性、線形応答)
- ナヴィエ・ストークス方程式 (流体力学の核心、粘性流れを支配)
- 基本的な粘性流れ (クエット・ポアズイユ流、円管流、レイリー流)
- 流れの相似法則
- 無次元化とレイノルズ数 (Shin Gozzillaの相似法則、航空機風洞、実験のココロ)
- 抗力と揚力 (下駄は空を飛べるか、翼、鳥と飛行機どこが違う)
- ながれの安定性と乱流
- 流れの遷移 (解は一つに非ず、レイノルズ数と共に変化する流れ)
- 乱流 (古典力学の最難問、あのノーベル賞受賞者たちも挑戦)