第1部 三元系正極活物質の高耐久化・高安全化のための表面改質技術
(2017年8月28日 10:30〜12:10)
リチウムイオン二次電池の正極活物質において、これから発展展開が期待されるニッケルーコバルト – マンガン (NCM) 三元系正極活物質の機能性・安全性を向上させる材料の改質技術について解説する。
本講演では、耐久性と安全性を確保しながら、ハイニッケル化・高容量化を進めるための表面改質技術について、改質材料・改質方法と、得られる改善効果について解説する。また、コアシェル型・濃度傾斜型粒子についても解説する。
- はじめに
- 主要三元系正極の特長と課題
- LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2 (333)
- LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2 (523)
- LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2 (622)
- LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2 (811)
- 表面改質の目的と効果
- 活物質被着
- Li2MnO3
- LiFePO4
- LiNiCoAlO2
- LiNiPO4
- リチウム塩被着
- LiAlO2
- LiF
- Li2ZrO3
- Li2WO4
- Li2MoO4
- Li2Si2O5
- Li3VO4
- LiLaPO4
- LiLaTiO3
- LIPON
- 金属酸化物被着
- Al2O3
- ZrO2
- TiO2
- SiO2
- SnO2
- ZnO
- CeO2
- Sb2O3
- CuO
- Co3O4
- MoO3
- Y2O3
- V2O5
- 非金属酸化物被着
- AlF3
- CaF2
- SrF2
- AlPO4
- FePO4
- Ni3 (PO4) 2
- Mn3 (PO4) 2
- LaPO4
- 炭素質
- 有機高分子
- コアシェル型・濃度傾斜型粒子
- コアシェル型
- 二重シェルコアシェル型
- コアシェル傾斜型
- 全濃度傾斜型
- 外層付き全濃度傾斜型
- 二段全濃度傾斜型
- まとめ
第2部 三元系正極材向けバインダー要求特性、選定と活用
(2017年8月28日 13:00〜14:40)
1991年、SONY 株式会社 の創生による、リチウムイオン電池は、コバルト酸リチウムを正極にして始まった。その後マンガン系やその改良系と、鉄リン酸リチウムなどの正極材で多種多様なセルの設計・製造がなされて来た。
2016年を境に、自動車はEVに大きく方向転換し、中期の目標として500kmEV走行に求められる電池システムは50kWhのレベルにある。kWh=Ah×Vであり、正極材の容量Ah/kgと電圧Vの向上は、先の既存の正極材では達成不可能な領域に到った。
既に数年前から、三元 (Co、Ni、Mn) 系組成の正極材 (L) CNM*は実用化が図られて来た。一方で、その化学組成が複雑かつ精密な故に、工業製品としての供給不安や、バインダーを含めた電極板製造の課題がなかなかスムースに行かなかった経緯がある。
本セミナーでは、上記の諸問題を総合的に扱うと共に、バインダー系については電気化学的な観点と、実用的な電極板製造との課題を集中して解説したい。
- 高容量 (2,3元系) 正極と特性
- EVなどの性能と正極の容量特性 (Ah、Wh)
- 正・負極材の電気化学と充放電サイクル
- 正極材の基本性能
- 正極材の性能向上 (1)
- 正極材の性能向上 (2)
- 正極材の粒子 (モルフォロジー)
- “使えない”正極材
- 電極の塗工媒体 (水、NMP) との問題
- 安全性 (電解液、セパレータとの関係)
- バインダーの機能と物理化学環境
- リチウムイオン電池 (セル) の電極の特徴と制約
- バインダーの機能 (塗工、接着、結着、サイクル)
- 充放電の電気化学とバインダーへの作用
- バインダーと電解液の関係 (溶解、膨潤)
- PVDF/NMP有機溶媒系
- SBR/水分散系
- その他バインダー系
- 電極板の製造工程とバインダー系
- 電極板製造工程の概略
- 塗工スラリーの調整と塗工媒体 (1) 有機溶解系
- 塗工スラリーの調整と塗工媒体 (2) 水分散系
- 塗工・乾燥と生産速度
- 電極板の良、不良 (参考) 製造装置類
- 混合・分散装置
- 塗工機 (コーター)
- まとめ
- “バインダーは要らない…”
- “湿式塗工も止めたい…”
第3部 三元系正極材料の劣化挙動解析
(2017年8月28日 14:50〜16:30)
より高い性能を引き出すために、LIBの劣化機構を解析することは極めて重要である。そのためには、電池の中で何が起きているのかを知ることが必要になる。
今回我々は、Niリッチな三元系正極活物質NMC (LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2) を対象にし、放射光を用いたXAFS分析と、球面収差補正機を搭載したSTEMによる微細構造解析から、活物質のどの箇所で何が起きているのかを調査したのでその結果を報告する。XAFSは、平均情報でありながら、バルクと表面付近を切り分けて考えることができ、STEMは局所情報であるが、場所にフォーカスした結果が得られるため、両者を組み合わせることはLIB正極活物質の劣化解析に最適であると我々は考えている。
また、例に挙げる活物質の種類は異なる予定だが、TEMを用いた新たな解析方法も合わせて紹介したい。
- 試作セルと劣化試験
- 試作セルについて
- 劣化試験について
- 劣化試験後の電池特性
- 分析内容
- XAFSとSTEMの組合せについて
- XAFSとは
- STEMとは
- STEMによる結晶構造解析の注意点
- NCAにおいて得られた知見
- NMCにおける分析結果
- 各元素に対するXAFS分析結果
- STEM分析による局所構造解析結果
- 各手法の総合的な解析結果
- まとめ
- TEMを用いたLIB正極活物質に対する新規解析手法の提案