(2017年7月10日 10:00〜12:00)
本格的な高齢社会を迎え、医療費および医療資源の効率的な使用の観点から、医療用医薬品からの転換による「スイッチOTC医薬品」や「ダイレクトOTC医薬品」の開発の促進が期待されている。厚生労働省はスイッチOTC薬を医療費削減策の一つとして期待しているが、「医療用医薬品の処方数に影響を与える」「受診抑制につながる」という意見を仄聞する。そこで、本講座においては、スイッチOTC化後の医療用医薬品の処方実態をメディカル・データ・ビジョン株式会社が保有する1,785万人 (2017年2月末時点) の診療データを活用し考察する。 医療用医薬品は歴史的にみれば、洋の東西を問わず教科書や文献の記述、あるいは先人の経験をよりどころにして医療行為を行ってきたのであって、この意味では「EBM:Evidence – Based Medicine」 (根拠に基づく医療) がなされたことに気づく。このような流れが生まれた背景には、医療行為を行う側の要請もさることながら、医療を受ける側の要請の高まりがあった。 一方、スイッチOTC薬を含めたOTC医薬品は「医薬品」でありながら“モノの動き“と“ヒトの気持ち“のマーケティングが主流であり、集団を対象とした、疾病の秩序、いわゆる疫学について統計的・科学的に立証された根拠に基づく洞察はあまりなされてこなかったようにおもえる。 本講座がスイッチOTC薬を含めたOTC医薬品の開発に携わるマーケター、マーチャンダイザー及び、セルフメディケーションのサポートを日々実践する皆様にとって、診療データに対する理解を深める機会となるとともに、H&BC業界と消費者との良好な関係構築の一助になれば幸いである。
(2017年7月10日 13:00〜14:45)
近年のわが国の高齢化や医療費の増大により,「セルフメディケーション」という考え方の重要性が高まっている。セルフメディケーション実践の手段として, 一般生活者がover the counter drug (OTC) を購入する機会が増えてきており、医療用医薬品からの転換によるスイッチOTC も幾つか販売されるようになってきている。 OTC の購入がより容易になったが、その反面、OTC における有害事象を解析した報告は少ないのが現状である。 近年、薬剤性有害事象の早期発見および発現傾向の把握を目的として,各国の規制当局により収集された有害事象の自発報告データベースを用いた、各種医薬品のリスク評価が数多く報告されており、このリスクを評価する指標として安全性シグナルを算出・数値化することが知られている。 本邦においても独立行政法人医薬品医療機器総合機構 (PMDA) により,医療用医薬品および一般用医薬品・要指導医薬品による有害事象自発報告が2004 年から収集されており,有害事象自発報告データベース (JADER) が毎月更新されている. そこで本講座では、JADER を利用してスイッチOTC 化されている医薬品の成分を対象に有害事象のシグナル検出法を用いて、OTCとして使用を想定した安全性評価を行った結果について解説する。 本結果がスイッチOTC医薬品で発生する有害事象の予測に役立つことが期待できる。
(2017年7月10日 15:00〜17:00)