本セミナーでは、構造・物性制御のために確実に理解したい高分子の結晶化について、基礎から丁寧に解説いたします。
高分子は長いひも状の分子である。よって結晶化するためには蛇のように滑り、絡み合いを制御しなければならない。高分子材料の構造と物性は結晶化により左右されるので、高分子の結晶化メカニズム解明に基づいた構造・物性の制御は重要である。 本講義では、まず物質の結晶化の普遍的な基礎理論を習得する。その上で、彦坂が提唱した高分子の “滑り拡散理論 (1987) ”を中軸にして、高分子の静置場結晶化から流動場結晶化までを講義する。滑り拡散理論は、長年未解明であった高分子結晶化を「高分子のトポロジー的本性」を取り入れて統一的に解明した理論である。 本講座の目的は、高分子材料の高性能化・高機能化を実現できる力をつけることである。入門編としてわかりやすく講義するが、内容は最先端の研究結果である。特に、最近発見した伸長結晶化による“ナノ配向結晶 (nano oriented crystal, NOC) ”を用いた高分子材料の高性能・高機能化については詳細に講義する。