鳥取はカニが特産で全国の半分は県内で水揚げされる。食品残渣として大量に発生するカニ殻を活用して、その主成分であるキチンをナノファイバー (NF) として製造することに成功した。キチンNFは幅が10ナノの極細繊維であり、均一なジェル状の水分散液として得られ、従来のキチンより加工し易い。キチンNFは、①高強度、高弾性、低熱膨張、高粘度、チキソトロピー性等の特徴的な物性を備えており、「素材を強化する補強材」や「食品の物性改良剤」として利用できる。また、多様な生理機能を備えており、②服用に伴うダイエット、腸管の炎症緩和、成人病予防、腸内細菌叢の改善効果のある「機能性食品」として、或いは、③肌への塗布に伴う創傷治癒の促進、皮膚炎の緩和、アンチエージング、保湿効果を活かし、「機能性化粧品」として、更に、④植物に対する「成長促進剤」、動物の免疫の活性化など「動物医薬品」等、農業や動物分野での利用も考えている。現在、大学や民間企業と連携し、キチンNFの改良、生理機能の探索、特徴を活かした機能性製品を開発している。
本セミナーではキチンナノファイバーの製造とその機能、そして特徴を活かした製品開発について網羅的に紹介する。
- キチンナノファイバーについて
- キチンとは
- 木材由来のセルロースナノファイバー
- カニ殻由来のキチンナノファイバー
- 効率的なキチンナノファイバーの製造方法
- スーパーエンプラのナノファイバー化
- キチンとセルロースナノファイバーの比較
- キチンナノファイバーの化学修飾による改質と機能化
- キチンナノクリスタル
- 表面キトサン化キチンナノファイバー
- キトサンナノファイバー
- アセチル化キチンナノファイバー
- 表面グラフト化キチンナノファイバー
- イミド化による表面改質
- 両イオン性キチンナノファイバー
- N – 塩素化ナノファイバー
- 機能性材料としてのキチンナノファイバー
- キチンナノファイバーゲルの製造
- 銀ナノ粒子の基材としてのナノファイバー
- キチンナノファイバーを複合した透明なフィルム
- プラスチックとの複合
- シルセスキオキサンとの複合
- キトサンとの複合
- グリセロールによる物性制御
- タンパク質と複合したキチンナノファイバー
- ハイブリッドキチンナノファイバー糸の触媒活性
- 乳化重合によるキチンナノファイバー/ポリスチレンの複合化
- キチンナノファイバーの生体機能
- キチンの生体機能
- キチンナノファイバーの肌に対する効果
- 肌の美容の促進
- 創傷の治癒
- アトピー性皮膚炎の緩和
- 服用に伴うキチンナノファイバーの効果
- 腸管の炎症の緩和
- ダイエット効果
- 腸内環境の改善
- 小麦製品の生地の強化
- 植物に対するキチンナノファイバーの効果
- 植物病原菌の抗菌
- 免疫機能の活性化
- 成長促進効果
- おわりに