ポリマーに金属粉末、カーボンブラック (CB) 、カーボンナノチューブ (CNT) などの導電フィラーを充填し作製した導電フィラー分散高分子複合材料は、フィラーが複合材料中でネットワーク状に連なり導電パスを形成するため、特異な電気特性を示す.特に結晶性ポリマーからなる導電性複合材料は、温度上昇とともに電気抵抗率が増加する正の抵抗温度係数 (PTC: Positive Temperature Coefficient) 特性を示す.PTC特性を示す材料はその特性から永久ヒューズ、温度センサー、ヒーターなどに応用可能である.導電性複合材料を永久ヒューズに応用する場合、室温抵抗率が低くかつ高温抵抗率が高く、抵抗率の増加が温度に対して急峻である必要がある.この目的に応じた導電性複合材料を作製するためには、PTC特性の発現メカニズムの解明が重要である.
本講演では、フィラーはそもそも高分子のどこに入っているのか、室温時の抵抗を低下させ、一方、高温時の抵抗を上げるというトレードオフの関係を達成するためには、PTC特性の発現はどのような機構で起こるのか、高分子とフィラーのインターラクションについて、懇切に紹介したい.
- 導電フィラー分散高分子材料とは?
- PTC (PTC: Positive Temperature Coefficient) 特性とは
- 複合材料の導電性発現機構
- 高分子の種類とPTC特性との関係
- フィラーがCBの場合のPTC特性 – 最適なCBは -
- フィラーが金属の場合のPTC特性 – 最適な金属は -
- ポリマーの結晶化度とフィラー分散高分子のPTC特性との関係
- ポリマーの結晶化度の評価法
- ポリマーの結晶化度とフィラー分散高分子のPTC特性
- フィラー充填量とポリマーの結晶化度
- フィラー充填量とフィラー分散高分子のPTC特性
- フィラー分散高分子の溶融後の冷却速度の導電性への影響
- 溶融後の冷却速度とポリマーの結晶化度
- ポリマーの結晶化度と室温抵抗率
- ポリマーの結晶化度とPTC特性
- 結晶性高分子/Ni複合材料のPTC特性
- Ni充填率と複合材料の室温抵抗率
- Ni充填率と複合材料のPTC特性
- 高分子とフィラーのインターラクション
- FITモデル
- ポリマーの分子量と複合材料の導電性
- HDPEの分子量と複合材料の導電性
- PMMAの分子量と複合材料の導電性
- 非晶性ポリマーと複合材料のPTC特性
- 非晶性ポリマーにおけるフィラーの分散性 (SEM写真)
- 非晶性ポリマーにおけるPTC特性
- 複合材料のPTC特性の定量的解析
- パーコーレーション理論における閾値の定義
- ポリマーの体積膨張及び結晶化度を考慮したPTC特性
- 絶縁領域の抵抗率になる温度での複合材料の見かけのフィラー充填率