第1部 リグニンの特性とその新しい応用展開
~環境規格から工業規格への構造標準化~
(2017年6月20日 11:00〜12:30)
植物はその生育環境に最適化されており、その形状、内部構造、分子組成は全て異なっている。中でもリグニンは、その基本構造が環境平衡の下で形成されるため構造と反応性が極めて多様であり、現在なお機能的な応用には至っていない。
多様性とその平衡から成り立つ生態系を、構造的振れを極度に排除した工業製品の原料として位置付けるためには、生物素材の段階的構造収束と特徴付け (機能開発) が必須となる。
本講義では、樹木細胞壁成分利用のキーとなるリグニンについて、その構造特性、反応性、工業的利用の現状と課題を総括すると共に、リグニンを分子セグメント複合体という新たな切り口で捉え、分子構造的規格化を行いながらそれを逐次解きほぐしユニバーサルな工業原料へと転換する新たなシステム技術について紹介する。
- 生態系における炭素の濃縮と解放
- 植物に包含された環境因子
- 樹木の代謝
- 細胞壁の微細構造
- 細胞壁構成素材の構造と分布
- 樹木を機能性分子工業原料へ
- バイオ規格と工業規格
- セルロースの分子規格とその標準化
- リグニンの分子規格とその標準化
- リグニンの工業的分離プロセスの特徴と課題
- リグニン利用の現状と課題
- 新しいリグニンの構造制御技術 ネットワークから高機能リニア型高分子への転換
- リグニンの構造標準化設計
- セルロースとリグニンの新しい関係をつくる ~新しい選択的同時構造制御システム~
- 工業規格化された新しいリグノセルロースの創製
- 樹木成分と石油系樹脂の新しい関係
- リグニンの機能的応用展開
- 森林からはじまる新しい持続的工業システム
第2部 リグニンの単離・改質とリグニンを活用した機能性材料の開発
(2017年6月20日 13:20〜14:50)
木材などの木質バイオマスからリグニンを取り出し、得られたリグニンが現在どのように利用されれているか、さらに、今後どのように利用しようしているかの動向を講義する。
- リグニンとは
- リグニンの生合成
- リグニンの基本的化学構造
- リグニンの単離法
- 既存の化学パルプ化
- オルガノソルブパルプ化
- 単離リグニンの物性と熱成形
- リグニンのガラス転移と熱流動
- リグニンの溶融紡糸と、炭素繊維および活性炭素繊維への変換
- 電子デバイス材料としてのリグニン系活性炭素繊維
- 両親媒性リグニン誘導体の開発
- リグニンの両親媒性材料への変換
- セメント分散剤としての機能
- 酵素安定化剤としての機能
第3部 リグニンを利用したエポキシ樹脂の開発とその特性、応用展開
(2017年6月20日 15:00〜16:30)
木質バイオマスの20~30%を占めるリグニンをエポキシ樹脂に応用し、熱硬化性樹脂としての可能性を調べた。ポリフェノール構造であるリグニンおよびフェノール化されたリグノフェノールでエポキシ樹脂を硬化させた。その結果、フェノール硬化エポキシ樹脂と遜色ない硬化性を示し、耐熱性の目安であるガラス転移温度は190℃を超える高い値を示した。さらに、フェノール樹脂と同様にエピクロルヒドリンによるエポキシ化も可能であることが確認されている。エポキシ化リグニンの硬化反応、硬化物物性についても述べる。
- 杉由来リグニンを用いたバイオマスベースエポキシ樹脂
- リグニンのエポキシ樹脂への応用と課題
- 杉由来爆砕リグニンのエポキシ樹脂硬化剤としての応用
- リグニン硬化エポキシ樹脂の硬化促進剤の検討と最適硬化条件の選定
- リグニン硬化エポキシ樹脂の特性
- 杉由来爆砕リグニンのエポキシ化の検討
- エポキシ化リグニンの硬化物の特性
- プリント基板用材料への応用と特性
- 麦わらリグニン由来エポキシ樹脂の開発
- 高純度化とエポキシ樹脂硬化剤としての検討と応用
- エピクロルヒドリンとの反応によるエポキシ化の検討
- モデルによるリグニンとエポキシ化リグニンの反応確認
- エポキシ化用相間移動触媒の検討
- 硬化促進剤の検討と最適硬化条件の選定
- フェノール硬化麦わらリグニンエポキシ樹脂の特性
- フェノリックリグニンとエポキシ化フェノリックリグニンの研究
- フェノリックリグニンの合成とモデル反応による確認
- フェノリックリグニン硬化エポキシ樹脂の研究
- エポキシ化フェノリックリグニンの合成と硬化物物性