第1部 高機能化が進む、撥液・高滑落表面創製技術の最前線
(2017年5月25日 10:00〜11:50)
これまで水や油をはじく表面を作製するには、有機フッ素化合物を使用し、表面を微細構造化して見た目の接触角を大きくすることが重要であると考えられてきた。動的濡れ性を制御することができれば、有機フッ素化合物を用いなくとも、また、接触角を大きくしなくても、水、油、あるいは氷の付着をも抑制することができる。
本講演では、撥液 (撥水/撥油) 処理の基礎と、講演者らの最新の研究開発状況について実例を挙げながら分かりやすく解説する。
- 濡れの基礎
- 静的接触角
- Youngの式
- Wenzelの式
- Cassieの式
- 三相接触線の重要性
- 動的濡れ性
- 前進/後退接触角、接触角ヒステリシス
- 転落角
- 動的濡れ性制御 (低ヒステリシス化) のコンセプト
- 撥液表面の開発状況
- 有機 – 無機ハイブリッド皮膜
- 生物の分泌機能に学んだ撥液材料
- 粘性液体に対する撥液性
- 着氷雪/海洋生物付着防止機能
- 自己修復型超撥水機能
- まとめと今後の展開
第2部 超撥水・超撥油化処理の簡素化を実現する機能性微粒子塗布による表面改質技術と産業応用への展望
(2017年5月25日 12:40〜13:50)
超撥水性と超撥油性を合わせ持つ表面は、その自己浄化作用に基づく状態維持の簡便性の点で重要である。超撥水・超撥油化処理には、表面の化学的処理に加え、表面上に微細な粗さをつくり出す物理的処理が必要である。近年の研究には、蓮の葉の表面の微細構造を模倣して、表面に規則的なナノ構造を形成させたものが多い。
本講演では、高度な技術や手法を必要とせず、従来のラジカル分散重合や高分子の自己組織化を用いて製造することのできる、機能性ナノ粒子を用いた簡便な表面超撥水・超撥油化処理について紹介したい。
- 分散重合で得られる機能性ナノ粒子による超撥水・超撥油化処理
- 分散重合による球状ナノ粒子の製造
- 超撥水表面処理
- 超撥油表面処理
- 超臨界二酸化炭素中での高分子の自己組織化を利用する表面撥水処理
- 超臨界二酸化炭素中で機能する高分子界面活性剤の設計
- 超臨界二酸化炭素中での高分子の自己組織化
- 直接的自己組織化
- 間接的自己組織化
- 二酸化炭素圧力 (密度) による自己組織化の制御
- 自己組織化による機能性ナノ粒子の製造と表面撥水処理
- 超臨界二酸化炭素を用いるタンパク質の表面撥水処理への応用
- タンパク質の撥水処理
- 撥水処理した酵素の活性
- 今後の展望
第3部 動的濡れ性 (撥液・親液) の制御および高耐久滑水性を実現する機能性表面の形成技術
(2017年5月25日 14:05〜15:25)
固体表面の濡れは身近な現象であり、様々な分野に密接に関係しています。目視でき直感的にイメージしやすい一方で、特に動的な濡れに関しては誤解が多く見受けられます。
近年重要視されてきている動的濡れ性 (撥液・親液) を含めて、固体表面の濡れ性を評価するために必要な知識と方法を、実際的な問題点と解決法を絡めながら解説します。さらに撥水性表面で問題になることが多い耐久性を解決するためのアイディアについて解説します。
- 静的濡れ性
- 接触角の定義と解釈
- 接触角測定法
- 接触角測定における注意点
- 液体の表面張力測定
- 固体の表面エネルギー測定
- 静的濡れ性の設計・制御
- 動的濡れ性
- 動的濡れ性の定義と解釈
- 転落角
- 接触角ヒステリシス
- 液滴転落挙動
- 動的濡れ性の測定法
- 滑落法
- 拡張収縮法
- 液滴転落挙動評価
- 3相界面の移動
- 動的濡れ性測定における注意点
- 動的濡れ性の設計・制御
- 高耐久滑水性表面の作製と評価
- その他,いくつかの材料表面での実例
第4部 素材技術と表面加工の融合による滑水性固体表面の開発と評価および産業的応用への展望
(2017年5月25日 15:40〜17:00)
カーボン材料をはっ水性材料に複合したシートの表面に加工を施すことで滑水性固体表面を開発した。この滑水性材料について紹介し滑水性表面の社会的ニーズについて紹介する。 また滑水性材料を開発するうえで重要な評価方法について提案し、評価法もあわせた滑水性表面の産業的応用への展望を紹介する。
- はっ水性と滑水性について
- はっ水性の評価方法
- 滑水性の評価方法
- 滑水性表面の社会的ニーズ
- 滑水性固体表面の開発と評価
- カーボン素材とインプリント技術を用いた滑水性表面の開発
- 滑水性表面の機能とメカニズム
- 滑水性表面の評価方法についての提案
- 従来のはっ水性・滑水性表面の提案評価方法による評価について
- まとめと産業的応用への展望について