赤外分光法は、その特徴からも主に有機化合物の化学構造や高次構造の解析手段として研究、開発され、今日では研究・開発だけでなく工場でのインライン評価などにも幅広く一般に使用されている。近年になって、ATR法を初めとした様々な測定法の開発や装置の改良等によって、従来困難であったような試料も容易に測定が可能となり、今日においてはなくてはならない基本的な測定手法としてその地位を確立している。
しかし、実際のサンプルや問題に直面した場合、どのように測定・解析を行っていけば良いかは依然重要である。しかし残念ながら、文献・教科書等では装置や測定法の原理は詳細に解説してあるものが多いが、そのアプリケーションとしての解説を十分に行っているものは少ない。
本講座は、赤外分光法の詳細で専門的な原理ではなく、よりアプリケーション寄りの内容、実務での赤外分光法活用を中心とした。実際の分析操作やスペクトルの解釈、実際の分析において対象とすることの多い異物や混合物、様々な試料や目的への対応の方法、事例などについて、実務使用における測定技術や応用技術、ノウハウを解説する。
- 第1部 赤外分光法の基礎と装置・アタッチメント
- 赤外分光法の基本原理と特徴
- 検出器の特徴と使い分け
- 代表的な測定法の特徴と選択法
- 透過法
- 全反射法 (ATR法)
- 拡散反射法
- その他 (正反射法、光音響分光法、ガスセル等)
- 測定方法のまとめ
- 顕微赤外分光法
- 顕微FTIRの基礎
- 顕微ATR法、イメージング、マッピング
- ラマン分光法との違い
- ATR結晶等、毒劇物を含むものの取扱いと対応法
- 第2部 赤外測定とスペクトル解釈・同定解析の実際
- 赤外スペクトルの概要
- 主な吸収帯
- 代表的な官能基の帰属
- 赤外スペクトルの見方、同定解析
- 赤外スペクトルの構造敏感性と複雑性
- 赤外スペクトルにおける指紋領域の利用
- 構造の類似したスペクトルの見分け方
- スペクトルマッチングの絞り込み方とその手順・注意点
- キーバンドの見方・活用法
- 特徴的な吸収帯を用いた系統同定のすすめ方
- 同定のためのピークの帰属のポイントと注意点
- 定量分析と検量線の使い方
- 試料間比較 (ピーク強度比法、内標準法)
- 大気成分補正
- スペクトルの処理法
- ベースライン補正
- スムージング
- 自動処理機能を利用する際の注意点
- ベースラインの取り方
- ピーク高さとピーク面積
- 混合物の分析法
- 前処理法
- 測定上の留意点
- 他手法との組み合わせによる対処
- 混合物解析に向けたスペクトル処理の実際
- ピーク分離手法
- 差スペクトル法
- 第3部 測定の実際と事例
- 各種試料の測定・処理テクニックと工夫
- フィルム
- 粉体
- バルク
- 液体
- 異物・微小物
- 繊維
- 汚染・表面付着物
- 黒色試料
- 結晶構造等の高次構造変化
- 状態別の分析テクニック
- バルク分析 (試料全体の情報を得る)
- 表面分析
- 深さ方向分析
- 温度可変測定