偏った太陽光発電バブルの崩壊、ドイツをはじめとした固定価格買取制度見直し等、先進国において再生可能エネルギーを取り巻く環境が変貌する状況において、陸上風力発電、洋上風力発電の重要性が一段と強まっている。 風力発電は、もともと開発の歴史が長く、技術の改良が行われ、発電コストが、太陽光発電と比較して安価である。風況の良い場所においては、大量の発電を行うことが可能であり、2015年末時点において、世界全体で4億キロワットを超える風力発電設備が稼働し、米国カリフォルニア州をはじめとした大規模風力発電所 (ウィンド・ファーム) は、100万キロワットを超えるものが誕生している。風力発電は、ライフ・サイクルで見た炭酸ガス排出量が少なく、独立した分散型電源として、離島、過疎地の電源としても利用が可能であり、夜間にも発電が可能である。 既に、国土面積が広い中国、米国等においては、風力発電の普及が進み、今後は、電力需要の伸びが著しいアジア、アフリカ等における風力発電の普及が見込まれている。風力発電に関しては、発電量の増加、発電の効率化を目指して、機器の大型化が行われており、風車の直径は100メートルを超え、1基当たりの発電量も3,000キロワットを超えるものがある。さらに、年間を通じて、風況が良い洋上風力発電の開発が進められている。日本の場合には、世界第6位の排他的経済水域 (EEZ) を誇り、洋上風力発電の今後の拡大が期待されている。 しかし、英国沖合い、デンマーク沖合いと異なり、日本の場合には遠浅の海域が少なく、着床式から、浮体式洋上風力発電の技術開発が期待されている。 今後も、世界的に風力発電の拡大が見込まれ、2030年には21億1,000万キロワットと、世界の発電能力の2割を占め、世界風力エネルギー会議 (GWEC) によると、年間33億トンもの炭酸ガス排出量を削減し、市場規模は2,000億ユーロ (約22兆円) 、240万人の雇用を創出すると予想されている。 風力発電は、太陽光発電と異なり、風車、発電機等のモノづくりの集積であり、風車に用いる炭素繊維をはじめとして、日本企業が素材・部品の強みを持っている。しかし、世界最大の風力発電国は、米国を抜いて、中国となり、中国は国内メーカーの育成に力を入れている。 中国企業、インド企業の台頭、欧米企業の事業拡大により、風力発電における発電効率向上、風力発電機の価格競争が熾烈さを増している。陸上風力発電、洋上風力発電が、日本および世界において、どのように成長するのか。海外企業と比較して遅れをとっている日本企業のビジネス・チャンスについて明確に解説する。