第1部. 運動器疾患の疼痛に対する抗NGF抗体の有効性の検討
(2017年3月7日 10:30〜11:30)
疼痛の原因では運動器疾患が多く、有症状の国民基礎調査から、腰痛は男性の第1位、女性の第2位を占めており脊椎疾患の関与が報告されている。
疼痛関連物質は多数存在し、その中でも神経成長因子 (Nerve growth factor: NGF) と痛みの関わりが近年注目されている。
我々は、臨床の病態に即した腰椎椎間板ヘルニア疾患モデルを用いて、NGFを含む治療標的を探索している。抗NGF抗体の有効性と可能性について、治療者側からの課題提示も含め解説する。
- 疼痛の分類と運動器疾患の位置づけ
- 脊椎疾患の病態からのリサーチクエッション
- 脊椎疾患モデルでのNGFとその他発現物質の推移
- 疾患モデルに対する抗NGF抗体の効果
- 臨床応用への課題
第2部. 神経因性疼痛に対する抗HMGB1抗体治療の効果
(2017年3月7日 11:45〜13:15)
High mobility group box-1 (HMGB1) は、クロマチンDNA結合タンパクとして知られていたが、1999年、エンドトキシン血症の重要なメディエータとして再発見された。
それから今日まで、起炎性DAMPの代表としてのHMGB1の働きが、各種の疾患モデルで明らかにされ、抗HMGB1単クローン抗体の有用性も多数報告されてきた。
本講座では、演者らが取り組む神経因性疼痛治療に焦点を当て、抗体治療について解説する。
- High mobility group box-1 (HMGB1) とは何か?
- HMGB1の再発見
- サイトカイン様のHMGB1の活性とパターン認識受容体
- 虚血性脳障害、外傷性脳障害、脳血管攣縮と抗HMGB1単クローン抗体治療
- 神経因性疼痛モデルに対する抗HMGB1抗体の治療効果
- 坐骨神経障害モデル
- 抗がん剤神経障害モデル
- ヒト化抗HMGB1抗体
- 今後の展望
第3部. 新規疼痛治療薬の開発動向と治療薬開発における薬効評価の留意点
(2017年3月7日 14:00〜16:00)
これまでの疼痛治療でpregabalin、duloxetine、NSAIDs等の有効性は実証されているが、アンメットニーズも高く、より有効な治療薬が切望されている。
目下、創薬研究は国内外各社で活発に行われており、既に多数の化合物が臨床段階へ進み、ステージアップも見られる反面、ドロップアウトする化合物も存在する。
その原因の1つとして薬効薬理試験の選定が上げられる。本講演では基礎から臨床研究までを解析、動物モデルと臨床効果の相関性に焦点をあてた。
- 疼痛治療薬の現状
- 痛みの分類とこれまでの疼痛治療薬
- 疼痛関連分子および痛みの発症や制御機構から既存の疼痛治療薬の解析
- 神経障害性疼痛治療薬における治療必要数 (NNT) および有害必要数 (NNH)
- 新規疼痛治療薬の開発動向 ~ 低分子化合物、配合剤、抗体医薬品
- 神経障害性疼痛
- 変形性関節症
- 難治性疼痛に対する新規疼痛治療薬開発における薬効評価法およびその留意点
- 種々の慢性疼痛疾患の病態や疼痛関連分子を背景に非臨床試験と臨床試験のエンドポイント (primary/secondary efficacy outcome) の解析や留意点の提案
~ 自発痛、体動痛、痛覚過敏、アロディニア、感覚鈍麻、しびれ等
- 神経障害性疼痛
- 帯状疱疹後神経痛
- 糖尿病性神経障害
- 抗がん剤誘発神経障害
- 脊髄損傷後神経障害など
- 線維筋痛症
- 術後痛
- 変形性膝関節症
- 癌性疼痛
- 疼痛治療薬の創薬を行う上でface、constructおよび predictive validityの再考
- 低分子医薬品と抗体医薬品の薬効薬理試験の選定および差異
- バイオマーカーの現状
- 動物試験における副作用検証のための試験