第1部 晶析のスケールアップ ~スケールアップに強い滴下晶析、30%晶析法
(2017年2月23日 10:30~12:30)
晶析は製造研究の一環である。反応もそうだがラボ通り製造ができれば合格である。ラボで出来てないことをスケールアップ実験してはいけない。スケールアップトラブルは大きくすると問題がでることを言うので、ラボで技術ができてないとスケールアップしてはいけない。
晶析ではスケールアップトラブルでなく、ラボ段階でダメとすぐ分かる本当はラボトラブルがほとんどである。項目としては濾過性、結晶多型、粒度分布、純度、不純物、回収率などがある。私の開発した滴下晶析、30%晶析法でほとんどの場合問題を解決している。
- 私の経験
- 企業化約10件
- 受託研究10件以上 (委託製造ではない)
- コンサルタント3社
- スケールアップは1000バッチ以上している
- 滴下晶析
- 結晶多型のコントロールに効果的
- 難濾過性化合物の濾過性改善に絶対的に有効
- 粒度分布のコントロール
- 30%晶析法
- 結晶多型のコントロールに効果的
- 粒度分布のコントロール
- 精製効果
- いろいろな種類の結晶が入手可能
- 2溶媒系の晶析にきわめて有効 (濾過性改善、オイルアウトの防止)
- 析は出来ればしたくない作業
- 晶析の省略が製造研究大きな成果 (中間体の単離をしない)
- 装置が高い
- 晶析が入ると生産性が悪くなる
- 製品コストが高くなる。
- マスバランス
- 晶析はかならずロスをする
- ロ液に逃げる量を把握する
- 溶解度を測定する (液クロだけで測定)
- 実験方法
第2部 実例で学ぶスケールアップ・ダウン検討と失敗例/解決 (対処) 法
(2017年2月23日 13:10~16:30)
原薬のスケールアップ製造は医薬品の開発では絶対に避けられない部分である。
前臨床試験、臨床試験、商用製造開始、商用製造開始後、各ステージでのスケールアップ製造のポイント (考え方) を実際に経験した例 (失敗例) を参考に説明し、更にどのように対処、解決したかも説明する。
そこから得られた知見をもとにスケールダウン実験の考え方、実験方法についても説明する。
- 医薬品 (原薬) の開発とスケールアップ (基本的な考え方)
- スケールとスケールアップの相違点
- 小スケールとスケールアップのパラメータの比較と考え方、設定法
- スケールアップ実験するためのチェックポイント、考え方
- 原料、中間体の評価項目 (安全性、安定性、結晶多形、溶媒和他) とその対応策
- スケールアップを想定した実験法 (スケールダウン実験)
- スケールアップとコスト・時間の考え方
- 反応条件とプロセスの関係 (事例) :7日近くかかるプロセス (反応→抽出→濃縮→晶析→乾燥) を2日に短縮。
- 事例から考えられる操作簡略化、時間短縮の応用例。
- プロセスを元に設備設計、設備を元にプロセス設計 (考え方)
- スケールアップでの失敗例 (実際の経験から) と対応策
- 開発初期 (実験室~10Lスケール) の事例
- 転位反応:
- 1gから10gにスケールアップしたら転位反応が原因で目的物が得られなくなった。
- 中間体の安定性 (ビタミンC硫酸エステル誘導体の製造) :
- 1gスケールでは目的物が合成できたが、10gスケールでは合成不可の結果となった。
- 目的物の安定性 (ピリジン・無水硫酸錯体) :
- 目的物が得られないのは吸湿性が原因と判断したが、逆に吸湿性を利用することで大量生産可能な方法に至った。
- 酒石酸イフェンプロジルの合成:
- ペントキシフィリン中間体の製法検討:
- 文献を参考に実験を進めたが目的物は得られず、実験結果に基づいて検討を進めたところ、簡単な製法にたどり着いた。
- 抗生物質の側鎖の製造:
- 新合成法を考案し、特許出願。
製造開始直前に中間体に安全性の問題 (蓄熱性試験) あることがわかり、検討中止。
- アルキルホルムイミデート類の合成 (カルバペネム系抗生物質側鎖) :
- カラム分離工程の回避:
- 前臨床試験に進むことが決まり、カラム分離工程回避の必要性が出てきた。
- 爆発性中間体の回避 (抗生物質側鎖) :
- メチルエステル、エチルエステルの比較実験をして、中間体の物性を比較。
合理的な合成法に至った。
- その他
- パイロット試作 (200~500Lスケール) での事例
- 目的物の安定性確認 (抗生物質側鎖:アミノチアジアゾール誘導体の製造) :
- 設備の性能を安易に考えてオーバー反応してしまった。
- 中間体の安定性確認 (塩酸ペンタゾシンの中間体の製造) :
- スケールアップして中間体を大量合成したら分解してしまった。
- 目的物が異性化 (抗生物質側鎖:アミノチアゾール酢酸誘導体の製造) :
- 再結晶プロセスをスケールアップしたら目的物が得られなくなった。
- 臭素の取り扱い (臭素化プロセスのスケールアップ) :
- パイロットにスケールアップしたところ、反応開始を確認できず、大きなトラブルに陥りそうになった。
対処法を検討した結果、合理的かつ安全なプロセス開発に至った。
- 撹拌速度の影響 (アセトン/炭酸カリウム系でのアルキル化反応) :
- その他
- パイロットから商用生産 (2000Lスケール以上) での事例
- PhaseⅢ試験後の製法変更:
- 爆発性の中間体を経由するためスケールアップ製造できずPhaseⅢ試験が終わってしまった。
- 目標規格の原料が手に入らない:
- 商用生産に入ろうとしたら原料が入手できなくなった。
- 設備変更して反応の本来の姿がわかった:
- パイロットまでGL、商用生産でSUSに切り替えたところ錆が発生。
- アミノチアゾール酢酸製造のスケールアップ:
- パイロットまでは問題なかったが、商用生産で乾燥機の選択を誤った。
- キャンペーン生産:
- スポット生産では問題なかったエステル交換反応を、キャンペーン生産に切り替えたところエステル交換反応が進まなくなった。
- 残留溶媒の規格:
- 結晶多形の同等性:
- 出発原料の製法に伴う問題 (製法に伴う異性体混入の可能性)
- 商用生産開始後の事例
- 収量低下の逸脱:
- 原料の純度アップ:
- 乾燥時間の管理:
- 順調に商用生産がスタートしたが、製品の乾燥時間が突然2倍 (10時間→20時間) になった。
- その他