現時点で再生医療実用化手段の最右翼は、我が国で開発されたiPS細胞の利用であり、世界的な開発競争が展開されているところである。早期の実用化のためには、iPS細胞の特性に応じた各種の培養支援デバイス、計測機器システムの開発が必要不可欠であり、ここに日本のものづくり技術が参入・貢献できる可能性は大きいはずである。
しかし、いったいどこからどう手を付ければ良いのかとの声もよく聞かれる。
そこで本講では、iPS細胞について、その増殖培養、分化誘導培養、および再生医療を目指した3次元組織培養に対する操作法の基礎や課題などについて平易に解説する。
次いで講演者が機械工学系の技術者、研究者の視点から独自に取り組んできた事例として、生化学的因子に加えメカニカルな刺激環境を実現することにより、iPS細胞の増殖培養、分化誘導培養、3次元組織構築培養を促進・支援するバイオメカニカルデバイスシステムの開発とその可能性などについて解説する。
- はじめに
- 細胞について
- 細胞の特性
- 細胞の分化
- 細胞の培養手法、設備
- 細胞への力学操作について
- 細胞への一般的な力学操作技術
- 個別細胞および小規模コロニーへの力学操作技術
- 大規模コロニーおよび細胞群への力学操作技術
- iPS細胞と再生医療について
- iPS細胞とは
- iPS細胞の培養技術、注意点
- iPS細胞による再生医療などの現況
- iPS細胞の増殖培養促進
- 再生医療に必要なiPS細胞数について
- 自動増殖培養装置の開発状況について
- 3次元振動ステージによる動的力学刺激を援用するiPS細胞の増殖促進
- iPS細胞の目的細胞への分化誘導培養促進
- 分化誘導培養の手段と課題
- 3次元振動アクチュエータによる動的力学刺激を援用するiPS細胞の分化誘導促進
- iPS細胞から3次元組織・臓器への構築培養促進
- 3次元組織構築培養の現状と課題
- PLA多孔質体の3次元ニューロンネットワーク構築への応用例
- ゲル包埋培養の3次元ニューロンネットワーク構築への応用例
- まとめと展望