(2017年1月31日 10:00〜11:30)
血管の脈動を体表から光学的に計測する光電脈波計は、装着部位の制限が少なく、安静時においては手首や上腕などでも脈拍数を計測可能であることから、ウェアラブルデバイスなどに応用されている。 しかしながら、運動時においては得られる信号に体動によるノイズ (体動アーチファクト) が混入するため、正確な脈拍数を計測することは容易なことではなく、新たな技術開発が必要となる。 運動強度を連続的にモニタリングすることはトレーニングの効率化やリスク管理を行う上で重要な要素である。
一般に、運動中の運動強度には胸部にベルトで装着する心電計で算出される心拍数が利用されているが、連続的に使用する際には煩わしさが生じるほか、競技によっては胸部への電極の装着が運動の支障になる場合もある。 一方、脈拍数を算出する光電脈波計は、計測部位に制限が少なく、手首や上腕などでも利用可能である。しかしながら、運動中の光電脈波信号を計測する場合には、信号に体の動きによるノイズ (体動アーチファクト) が重畳するため、運動中の脈拍数を正確に算出することは容易でなく、新たな技術が必要となる。 そこで、本研究では、生体組織の光学特性に着目し、異なる 2 波長 (緑色光、近赤外光) を光源にもつウェアラブル光電脈波計を開発し、運動中における 2 つの光電脈波信号の特性と関係について検討した。 さらに、効率的なトレーニングおよびリスク管理支援を実現するために、その 2 つの光電脈波信号を用いて信号に含まれる体動成分を除去し脈拍数を算出するアルゴリズムを提案するとともに、運動中の脈拍数モニタリングに対する有用性を検証した。
(2017年1月31日 11:40〜13:10)
脈波から算出できる指標は多数あるが、低ノイズ化に向けたアプローチは単一ではない。 そこで本講座では、脈波測定の基本原理を確認の後、各種生理指標の算出法、および、そこで用いられている低ノイズ化のアプローチについて見ていく。 講師の豊富な研究開発経験に基づき、脈波応用と低ノイズ化の具体例を多数紹介するため、他では絶対に聞けない、実践的かつ応用範囲の広い内容となっている。
(2017年1月31日 13:50〜15:20)
光電容積脈波法による心拍センシングでは、運動中の体動ノイズが大きな問題であり、これまで多くの研究がなされてきているが、激しい運動中の体動ノイズを除去できる方法はなかった。 通常の脈波センサに加え、同じ構造を持った体動センサを用いる方法は、我々のオリジナルのものであり、スプリントや跳躍時であっても体動ノイズを除去できる。 本講座では、従来の方法と我々の方法を平易に解説する。
(2017年1月31日 15:30〜17:00)
本講座ではまず、脈波を計測し、それらの解析結果について、どのように解釈し利用するかという点を演者の現在までの研究成果から述べる。これらから、脈波解析の応用例について考察していく一助となることを期待している。 次に、主観評価を数値化することを述べていく。演者は主観評価を調査し、数値化することが、脈波などの生体信号解析の結果とその解釈を相補する有益な手法となるのではないかと考え、研究してきた。ここでは、良く知られている手法のLikert Scale (LS) を概観するとともに、疼痛評価として医療保健分野でよく利用されているVisual Analog Scale (VAS) をも概観していく。これらと演者のこれまでの研究結果をあわせ、LSおよびVASの関連性などについても言及する。さらに、脈波解析と主観評価値を合わせて解釈することも延べ、二つの指標により得られる解釈というユニークな視点をも紹介する。