(2017年1月18日 10:15〜11:45)
ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動モータの発展を担うのは、高温において高性能な永久磁石をいかに開発するかに依る。サマリウム – 鉄 – 窒素磁石は高温においてネオジム磁石を超える性能を有するにもかかわらず、焼結磁石の作製が難しいことからこれまで注目されなかった。 産総研では、このサマリウム – 鉄 – 窒素磁石に焦点を絞って詳細な研究開発を行うことにより、その磁気特性を低下させることなく焼結磁石を作製することに世界で初めて達成した。 本講演ではその経緯の詳細を述べるとともに、現在の実用化に向けた研究の最前線を紹介する。
(2017年1月18日 12:30〜14:00)
Nd – Fe – B磁石はハイブリッド自動車などの環境対応製品の普及により需要が拡大しています。特に自動車用途では高温環境で磁石が所望の性能を発揮するために高い保磁力が要求され、Dyなどの重希土類元素が活用されてきましたが、近年顕在化した資源問題を背景として、高保磁力磁石のDy低減が強く望まれています。 本講義ではこのようなNd – Fe – B磁石の課題解決に向けた保磁力支配要因の解析ならびに高保磁力Nd – Fe – B磁石のDy低減技術について研究開発動向を概説します。
(2017年1月18日 14:10〜15:20)
ネオジム磁石は、工業生産されている磁石の中で最も高磁力を有するため、モータ用材料としての需要が急増している。その中でも、HEVやEVの駆動モータに使用されるネオジム磁石には、高い磁力だけでなく、高い耐熱性 (=高保磁力) が要求される。そのため、これらに対しては、通常は保磁力向上に有効な重希土類元素が5~10wt.%添加されている。しかし、資源面の問題により、重希土類元素の使用量を減らすことは、世界的な課題となっている。 そこで、主に組織制御で高保磁力を達成するため、耐熱性に有効な微細組織を有する熱間加工磁石に着目し、本磁石に対して、プロセス条件と成分設計の最適化を行ない、量産車への適用が可能な重希土類元素完全フリー磁石を開発した。
(2017年1月18日 15:30〜17:00)
NdFeB合金と独自の水素反応処理の発明により安定的に高い飽和磁化を持つ高性能磁粉の量産に成功し、さらに粒界拡散法によりDyフリーで高い保磁力を有するNd系異方性ボンド磁石 (マグファイン) の開発に成功した。 圧縮成形リング磁石により、従来のフェライト焼結磁石を使用したシートモータの重量、サイズを大幅に低減し小型軽量化が実現した。また、熱可塑性樹脂を用いた射出成形工法の場合、モータコアに直接一体成形が可能となり、モータ製造時において大幅な工程省略を実現し、現在市場拡大中である。 形状自由度に優れ、高い電気抵抗率を有するDyフリー・マグファインは、今後のパワーエレクトロニクスの技術の進歩と伴に、さらなる高効率モータへの実現に大きな期待が集まっている。