第1部. ペプチド化学を基盤とする中分子創薬への展開
- 低分子薬Plinabulinから抗体薬物複合体 (ADC) 創薬への展開 -
(2016年12月20日 10:30〜12:00)
従来の低分子医薬品に加え、抗体医薬のような高分子が創薬における重要な位置を占める時代となっているが、 最近さらに両者の利点を兼ね備えた新たな創薬プラットフォームとして「中分子」が注目されている。
本講習では、ペプチド基盤の中分子創薬を概説し、更に我々の進める中分子創薬研究例を述べる。
中でも腫瘍血管遮断剤 (VDA) として独自開発したチューブリン重合阻害剤 Plinabulin (Phase III) を利用した中分子ペプチド – 抗がん剤架橋体の創製に基づく、抗体薬物複合体 (ADC) への展開について解説する。
第2部. ADCにおけるリンカーの安定性向上・位置選択的結合の概説
(2016年12月20日 12:45〜14:15)
ADC において、リンカーは抗体と薬物を結合する構成要素である。ADC は、血液循環中では安定でなければならない一方、目的部位においては薬物を放出する。抗体あたりの薬物の数、放出速度、放出部位などはリンカーにより制御される。最近のリンカーテクノロジーの進展をまとめる。
- 抗体薬物複合体 (ADC) においてのリンカーの重要性
- ADC 開発初期におけるリンカー
- リンカーに必要な要件
- ADC 開発成功例におけるリンカー構造
- 薬物放出速度の制御
- 抗体とリンカーの結合
- スルフヒドリル基とマレイミド結合の不安定性と安定性の向上
- 酵素による位置選択的反応
- 糖鎖部位による連結反応
- in vitro protein 合成による非天然アミノ酸の導入とリンカーの連結
- 抗体あたりの薬物の数の制御
- 分岐リンカーの構造
- 薬物の切断機構
- その他
第3部. 抗体薬物複合体の研究開発における分子イメージングの有用性
(2016年12月20日 14:30〜16:00)
抗体薬物複合体 (ADC) の研究開発において、抗体デリバリーとリンカーのコントロールド・リリース能の評価に分子イメージングを利用している。
技術要素と実例を交えながら分子イメージングの有用性を紹介する。
- 蛍光標識抗体を用いた抗体イメージング
- フローサイトメトリー
- 細胞内インタナリゼーション
- in vivoイメージング
- EPR効果
- アクティブターゲッティング
- 抗体サイズ
- 標的性の影響
- 組織内分布
- PET/SPECTイメージングを用いた抗体イメージング
- in vivoイメージング
- 組織内分布 (オートラジオグラム)
- MSイメージングを用いたADCの評価
- MSイメージングと薬剤の可視化
- in vitro評価法
- in vivo評価法
- 疾患別の分子イメージングの応用実例
- 血液性悪性腫瘍 (悪性リンパ種・白血病)
- 脳腫瘍と血液脳関門
- 膵臓がんと間質バリア
- 分子イメージングとADCの今後の発展性
第4部. 抗体薬物複合体におけるDDS技術とその評価
(2016年12月20日 16:15〜17:45)
ビフィズス菌は静脈内に投与した場合、非常に高い選択性をもって腫瘍でのみ蓄積し増殖する。このような特徴を利用して、腫瘍組織に対するDDS担体としてのビフィズス菌の有用性が注目されつつあり、現在アメリカで治験を実施しているものが出てきている。
本講演では、イムノトキシン (抗EGFR抗体 – 緑膿菌外毒素Aサブユニット融合体) とビフィズス菌を組み合わせたDDSを基盤とする抗腫瘍薬の開発について紹介する。
- ビフィズス菌を用いたDDS (ドラッグデリバリーシステム)
- ビフィズス菌 (Bifidobacterium longum) とは
- ビフィズス菌を用いたDDSの特徴
- ビフィズス菌の腫瘍選択的蓄積
- イムノトキシン (抗EGFR抗体 – 緑膿菌外毒素Aサブユニット融合体) とビフィズス菌を組み合わせたDDS
- イムノトキシンの構造
- イムノトキシンの分子レベルでの作用機序の解析
- イムノトキシンの細胞レベルでの作用機序の解析
- イムノトキシンを分泌発現するビフィズス菌のin vivoでの抗腫瘍効果の解析
- 今後のビフィズス菌を用いたDDS研究の展望と課題