今、日本企業は、先進国企業を徹底して研究しさらに極めて戦略的かつ積極的・大胆な展開をする新興国企業の追撃を受けており、この傾向は今後も益々強くなることは明らかです。このような環境の中で、日本企業が成長し存続し続けるためには、継続的に革新的な製品を創出する能力を身につけることが極めて重要であることは、議論を待ちません。革新的な製品とは、大きな『顧客』価値を創出する製品であると定義することができます。この大きな『顧客』価値を創出する上で、研究開発部門は大きな責務を負っています。しかし、現状の研究開発部門は心理的にも、経営プロセス・組織的にも顧客や市場から遠いところに位置しており、『顧客』価値を創出するには大きな問題を抱えています。
この問題を解決する方法が、研究者・技術者をマーケティング志向に変えることです。今やマーケティングは、研究開発部門が備えておかなければならないというレベルの能力ではなく、『企業存続のための必須』の能力です。
本セミナーにおいては、研究開発部門が担わなければならないマーケティング機能・役割とそれらを実現・実行するための知識および活動について包括的かつ具体的に議論をします。特にマーケティングの重要概念が研究開発活動においてなぜ必要で、具体的にどこで必要となるかについて、明確に理解いただくことを重要視します。
- はじめに
- 「研究所は人間の気持ちを研究するところであって、技術を研究するところではない」 (本田宗一郎)
- 日立の「顧客起点型」研究開発
- 研究開発部門が置かれている環境
- 研究開発部門のあるべき姿
- これまでの研究開発部門
- 中央研究所時代
- 第3世代のR&Dとその破綻の
- その結果としての過度の既存顧客中心 (エレクトロニクスメーカーの例)
- あるべき研究開発部門の姿
- 市場の現実:捉えどころのない「竜」
- 市場をベースとした創発研究開発
- 研究開発部門の課題とマーケティングの関係
- 研究開発部門の課題 (その1) :テーマ創出力の弱さ
- Garbage in,Garbage Out
- 「How」と「What」の混同
- テーマ創出のための体系的仕組みの構築とマーケティングの必要性
- 研究開発部門の課題 (その2) :事業推進力が不在
- Value Creation と Value Capture
- 既存事業に向けた研究開発と新規事業に向けた研究開発の大きな相違
- Value Creation機能とValue Capture機能の一体化の必要性
- 研究開発部門の2つの課題とマーケティングの関係
- 研究者・技術者が押さえておくべきマーケティングの重要概念
- 顧客提供価値:ドリルメーカーは何を売っているか?
- マーケティングミックス:4P (Product、Price、Place、Promotion) と顧客提供価値との関係
- 3C (Customers、Competition、Company) :3Cが収益を決める
- 顧客 vs.市場:イノベーションのジレンマ (ワイヤー式建機と油圧式建機)
- 4つの顧客層とキャズム
- 顕在ニーズ vs. 潜在ニーズ
- なぜ潜在ニーズを捉えることが必要か?
- なぜキーエンスは超高収益なのか?そのメカニズム
- ものづくり vs.価値づくり
- STP (Segmentation、Targeting、Positioning) :ターゲティングの失敗
- 5フォーシーズ:なぜPC業界は低利益率なのか? (ソニーのVAIO事業の売却の例)
- 市場知識、技術知識、自社の強みのスパーク
- 良いテーマの創出力強化のために
- 良いテーマとは (「5.研究者・技術者が押さえておくべきマーケティングの重要概念」に基づき)
- 良いテーマの10の要件
- 顧客提供価値拡大モデルVACES
- 日本触媒の例
- 日東電工の例
- 東洋電機の例
- 3Mの例
- コマツの例
- サムスンの例
- 良いテーマの10の要件追求上の大きな課題と対処法:ステージゲート・プロセス
- 良いテーマの創出法
- 1 市場・顧客を理解する3軸:TADと各軸に沿った市場理解の活動
- 時間軸 (Time)
- 分野軸 (Area)
- テトラパックの例
- GEヘルスケアの例
- カルピスの例
- ワコールの例
- 深度軸 (Depth)
- IBMの例
- ICIペイントの例
- イッツコムの例
- キーエンスの例
- ディスコの例
- 日東電工の例
- ユニクロの例
- 日立の例
- 良いテーマの継続的創出の体制 (参考)
- 事業推進力の強化のために
- 事業推進力の強化に向けての5つの活動
- 研究者・技術者であり事業推進者という意識を持ちそして行動する
- 早期から最終的なビジネスモデルの構想を持つ
- 自社やグループ企業の力を最大限に活用する (三菱ケミカル)
- 外部の能力を活用する (富士フイルム)
- 事業化推進のための仮説・検証サイクルを迅速に回す
- 最後に