乾燥操作は熱を与えて水分を蒸発させる点から相変化を伴う熱と物質の同時移動現象の典型例である。成型材料,粉粒状材料,ペースト状材料さらに液状材料ときわめて多種類の材料が乾燥の対象となるので、乾燥装置もまた多くの形式がある。乾燥操作の予備知識として湿り空気の諸性質、熱と物質の同時移動の典型例である湿球温度の概念、湿度図表を解説する。含水率、材料中での水分の保持状態を解説し、塗布膜乾燥を含めて乾燥のメカニズムを考える。乾燥のメカニズムに基づいて乾燥速度の定量的な捕らえ方を講義し、乾燥時間を短くするコツを紹介する。また組成偏析、材料の変形やクラックの発生、材料の表面平滑性、残留溶媒の低減策に関して講述する。 多種多様な材料を乾燥するために数多くの乾燥装置が開発されているが、装置選定、装置設計、省エネルギーのポイントを解説する。さらに塗布膜乾燥、乾燥過程でのフレーバー散失、酵素の熱安定性向上、超臨界乾燥あるいは凍結乾燥による乾燥収縮防止を取り上げ、製品品質に及ぼす乾燥操作の影響に関する基本的な考え方を解説する。講演の最後には乾燥操作のトラブルシューティングに関する質問を受け付ける。
近年、塗布膜のコーティング・乾燥プロセスは、処理能力の高さ、低コスト性などの観点から、主要な製造技術として用いられている。プロセスの高品位化および高速化は、生産効率の向上やコスト削減には不可欠な課題でとなっています。 本講座では、表面エネルギー等の塗布乾燥の基礎に基づき、プロセスの本質を理解することで高品位化・高速化を考察することを目的とし、乾燥ムラなどの塗布乾燥におけるトラブルを解決する能力を養えます。また、研究開発・トラブルフォローといった実務上での取り組み方について、豊富な実例を交えて解説します。本講座を通じて、初心者にも分かりやすく、基礎から学んでいただけます。また、受講者が抱えている日々のトラブル相談にも応じます。
塗布膜の乾燥機構の解明は、様々な工学等の分野で求められている重要な課題である。塗布膜の乾燥においては 、例えば乾燥後の膜厚分布が均一になることが求められるが、多くの場合、膜厚分布が均一にならず、また乾燥条件によって膜厚分布が変化することが経験的に知られていた。均一な乾燥後の膜厚分布を得るためには、塗布膜の乾燥過程の機構を解明することがまず必要で、その解明を経て、必要な制御を系に施すことにより、均一な乾燥後の膜厚分布を得るという目標へ近づくことになる。均質な膜分布を得る場合も同様である。また、乾燥後の様々な欠陥を克服する際にも、同様のプロセスが必要となる。 本講演では、塗布膜の乾燥工程の機構を解明するにあたり必要となる物理学的知識、考え方の講義から始めて、それらを基にした上記工程のモデル化の実際、およびその数値シミュレーションの実際を概説するとともに、これに基づいて様々な塗布膜不具合の原因を物理学的に考察する。そして、膜乾燥における様々な欠陥、問題の克服と、膜厚分布の制御の方法について考察する。この講演が、今後参加者が実際に扱う系の乾燥過程の理解および乾燥後の欠陥対策のヒントとなることを目指す。