上手な塗布膜の乾かし方

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2016年11月28日「乾燥操作の予備&必須知識と塗布膜乾燥メカニズム、品質保持と勘どころ」

 乾燥操作は熱を与えて水分を蒸発させる点から相変化を伴う熱と物質の同時移動現象の典型例である。成型材料,粉粒状材料,ペースト状材料さらに液状材料ときわめて多種類の材料が乾燥の対象となるので、乾燥装置もまた多くの形式がある。乾燥操作の予備知識として湿り空気の諸性質、熱と物質の同時移動の典型例である湿球温度の概念、湿度図表を解説する。含水率、材料中での水分の保持状態を解説し、塗布膜乾燥を含めて乾燥のメカニズムを考える。乾燥のメカニズムに基づいて乾燥速度の定量的な捕らえ方を講義し、乾燥時間を短くするコツを紹介する。また組成偏析、材料の変形やクラックの発生、材料の表面平滑性、残留溶媒の低減策に関して講述する。  多種多様な材料を乾燥するために数多くの乾燥装置が開発されているが、装置選定、装置設計、省エネルギーのポイントを解説する。さらに塗布膜乾燥、乾燥過程でのフレーバー散失、酵素の熱安定性向上、超臨界乾燥あるいは凍結乾燥による乾燥収縮防止を取り上げ、製品品質に及ぼす乾燥操作の影響に関する基本的な考え方を解説する。講演の最後には乾燥操作のトラブルシューティングに関する質問を受け付ける。

  1. 乾燥の必須基礎
    1. 乾燥の予備知識
      1. 乾燥操作の量的関係を知ろう
        • 物質収支 ・熱収支
      2. 空気の性質を知ろう
        • 湿度 ・湿り空気の諸物性値
      3. 材料温度を知るヒント
        • 湿球温度 ・断熱飽和温度
      4. 乾燥中の空気の状態変化を知る武器
        • 湿度図表とは ・湿度図表の使い方
      5. 材料は水分をどれだけ含むか?
        • 含水率の定義
      6. 材料をどこまで乾燥できるか?
        • 平衡含水率と自由含水率
    2. 乾燥時間短縮のために
      1. 材料は水分をどのような状態で含むか?
        • 水分の保有状態と移動機構
      2. 乾燥の挙動を知る
        • 乾燥特性曲線の概念 ・乾燥の3期間 ・限界含水率の重要性
      3. なぜ乾燥速度が一定なのか?
        • 定率乾燥速度
      4. 熱風の状態が変わればどうなるか?
        • 通気乾燥速度
      5. 乾燥速度はどのように減少するか?
        • 減率乾燥速度
      6. 乾燥時間を短くするコツ
        • 減率乾燥速度曲線の形に基づく方策
    3. 塗布膜乾燥のメカニズムと品質保持
      1. 組成のムラはなぜ生じるか?
        • 組成偏析とバインダーの移動
      2. 剥離,クラック,変形はなぜ生じるか?
        • 乾燥応力と乾燥速度 ・乾燥収縮防止策
      3. 塗布膜乾燥における表面平滑性を保つには?
        • 平滑性に及ぼす乾燥条件の影響
      4. 残留溶媒を効率よく低減したい
        • 水蒸気などの共存効果 ・水溶性溶媒の共存効果
  2. 乾燥装置の選定と設計
    1. 装置の選定
      1. 乾燥装置の特徴を知る
        • 乾燥装置の分類 ・乾燥装置の特徴 ・熱風と材料の接触方式
      2. 乾燥装置をどう選ぶ?
        • 乾燥操作の特異性 ・選定の考慮事項
    2. 装置の設計
      1. 装置容積を見積るには?
        • 装置容積の簡便計算法
      2. 乾燥装置を設計するには?
        • 乾燥装置の設計の基礎
      3. 省エネルギーは?
        • 熱風乾燥装置の熱効率 ・乾燥装置の排風循環の指標
  3. 乾燥操作と製品品質
    1. 粒子塗布膜乾燥
      1. 粒子分散系塗布膜乾燥の特徴を知ろう
        • 乾燥挙動と乾燥モデル
      2. 表面平滑性を保つコツ
        • 平滑性に及ぼす乾燥条件の影響
      3. どのような乾燥方法が良いか?
        • 塗布膜乾燥の指針
    2. 乾燥過程におけるフレーバーの保持
      1. なぜ乾燥過程でフレーバーが保持?
        • 選択拡散理論
      2. 噴霧乾燥過程でフレーバー散失を防ぎたい
        • 選択拡散理論の応用
      3. 凍結乾燥過程でフレーバー散失を防ぎたい
        • 微小領域説
    3. 糖類のアモルファス構造を利用した酵素の熱安定性の向上
      1. 酵素の熱安定性を向上させたい
        • 糖添加の効果
      2. 糖の種類をどう選ぶか
        • 熱安定性の指標の提案
    4. 超臨界乾燥と凍結乾燥を利用した多孔性カーボンの作製
      1. どのようにゲルの収縮を防ぐか?
        • 超臨界乾燥と凍結乾燥
      2. カーボンの多孔構造を制御するコツ
        • 合成条件と乾燥法
  4. 乾燥操作のトラブルシューティング
    • 質疑応答

2016年12月9日「塗布膜乾燥プロセスの本質理解&最適化と欠陥・トラブル対策」

 近年、塗布膜のコーティング・乾燥プロセスは、処理能力の高さ、低コスト性などの観点から、主要な製造技術として用いられている。プロセスの高品位化および高速化は、生産効率の向上やコスト削減には不可欠な課題でとなっています。  本講座では、表面エネルギー等の塗布乾燥の基礎に基づき、プロセスの本質を理解することで高品位化・高速化を考察することを目的とし、乾燥ムラなどの塗布乾燥におけるトラブルを解決する能力を養えます。また、研究開発・トラブルフォローといった実務上での取り組み方について、豊富な実例を交えて解説します。本講座を通じて、初心者にも分かりやすく、基礎から学んでいただけます。また、受講者が抱えている日々のトラブル相談にも応じます。

  1. 塗布膜形成の基礎 (塗工液から膜形成まで)
    1. 塗工液から塗布膜へ
      • 液体から固体 (膜) への変化
      • 混合と溶解
      • 粘性
      • 表面張力
      • 動的挙動
    2. 塗布膜の乾燥
      • 膜の品質決定
      • 濃度差拡散
      • ラプラス力
      • 蒸気圧
      • 凝集単位
  2. 各種コーティングの原理とコントロール (現象と装置機構)
    1. ロールコーティングの基礎
      • 正回転
      • 逆回転
    2. ダイ・コンマ・マイクログラビアコーティング
    3. スピン、スリット、ディップ、スプレー、インクジェット、ナノ粒子ペースト
  3. 塗工液の濡れ制御 (濡れの不確定要素を見極める)
    1. 表面エネルギーと濡れ性 (Herringの式)
    2. Youngの式により濡れ現象を理解する (濡れから塗布へ)
    3. 表面エネルギーの使い方 (エネルギーで塗布現象を表す)
    4. 接触角を理解する (動的濡れ性、拭き取り)
    5. ウェットプロセスの評価手法をマスターする
      • 拡張係数S
      • 洗浄
      • 気泡除去
    6. パターン配置による濡れ (ピンニング効果を抑える)
    7. 基板材質の差による濡れ (Cassieの式を使いこなす)
    8. 基板の凹凸による濡れ (Wenzelの式を使いこなす)
    9. 時間変化による濡れ (初期濡れを決定する)
  4. 塗膜の乾燥メカニズムと高品質化 (乾燥のツボを抑える)
    1. 濃度差拡散
      • 塗膜内の溶剤移動を支配する
    2. 蒸気圧
      • 乾燥を促進する環境設定
    3. ラプラス力制御
      • 塗膜の凝集性の発現
    4. 乾燥装置の最適化の要因
      • 乾燥速度
      • 乾燥限界とは
    5. 加熱乾燥
      • 赤外線乾燥
      • 比熱
      • 熱容量
      • 熱伝導
    6. 減圧乾燥による膜質改善
      • 膜内応力の緩和
    7. 凍結乾燥
      • 微粉末の作製方法
    8. 超臨界乾燥
      • 微細構造の乾燥方法
    9. スピン乾燥の膜質制御
      • ナノレベルの膜内均一性
  5. トラブル対策 (発生原因を特定し解決策を見極める)
    1. ピンホールの抑制方法
      • 濡れ不良
      • 拡張濡れ法
    2. 表面硬化層の形成過程
      • 塗膜内の凝集性分布
    3. 乾燥ムラの発生メカニズム
      • マランゴニ対流
      • 自発拡張法
    4. 膜剥離の防止法
      • ポップアップ・ガス発生
    5. 膜クラックの抑制
      • 応力ミスマッチ
      • 応力吸収
    6. 膜クレイズの発生メカニズム
      • 環境応力亀裂
      • 溶液との接触
    7. フラクタル粘性指状
      • VF 変形とは
      • 接着剤
      • 界面付着性の劣化
    8. 微粒子の乾燥メカニズム
      • ウォーターマークの形成
    9. フィルム剥離機構と残渣発生
      • 自己応力発生機構
  6. コーティングプロセスの管理計測方法
    1. 光散乱法によるフィルムエッジ検出
      • 膜剥離残り
    2. 光干渉法による薄膜の膜質評価
      • 屈折率分散
    3. フィルムの帯電制御と評価
      • 帯電メータによる管理
  7. 塗膜の品質保証 (劣化、加速試験、寿命評価)
    1. 膜の劣化要因と活性化エネルギー
    2. 不良率
      • バスタブ曲線
    3. データの統計的管理法
      • 標準偏差
      • 相関係数
      • 判定
    4. 塗膜の品質保証
      • ワイブル分布
      • 加速試験
      • 寿命評価
  8. 質疑応答
    • 日頃の疑問・トラブル・解析・技術開発相談に応じます

2017年1月19日「塗布膜の乾燥のシミュレーション、解析方法と膜厚制御、乾燥欠陥対策」

 塗布膜の乾燥機構の解明は、様々な工学等の分野で求められている重要な課題である。塗布膜の乾燥においては 、例えば乾燥後の膜厚分布が均一になることが求められるが、多くの場合、膜厚分布が均一にならず、また乾燥条件によって膜厚分布が変化することが経験的に知られていた。均一な乾燥後の膜厚分布を得るためには、塗布膜の乾燥過程の機構を解明することがまず必要で、その解明を経て、必要な制御を系に施すことにより、均一な乾燥後の膜厚分布を得るという目標へ近づくことになる。均質な膜分布を得る場合も同様である。また、乾燥後の様々な欠陥を克服する際にも、同様のプロセスが必要となる。  本講演では、塗布膜の乾燥工程の機構を解明するにあたり必要となる物理学的知識、考え方の講義から始めて、それらを基にした上記工程のモデル化の実際、およびその数値シミュレーションの実際を概説するとともに、これに基づいて様々な塗布膜不具合の原因を物理学的に考察する。そして、膜乾燥における様々な欠陥、問題の克服と、膜厚分布の制御の方法について考察する。この講演が、今後参加者が実際に扱う系の乾燥過程の理解および乾燥後の欠陥対策のヒントとなることを目指す。

  1. 塗布膜の乾燥工程の概要と課題
    1. 乾燥させるとは?
      1. 乾燥が進行する原理
      2. 乾燥を進行させる方法
    2. レジスト塗布工程の例
      1. 塗布方法
      2. 乾燥方法
    3. 乾燥後に求められるもの
  2. 液体の理論
    1. 液体の一般理論
      1. 液体中の分子に働く力
      2. 液体を固体から乱れた状態としてとらえる
      3. 液体を気体論的に考える
    2. 液体論からみた蒸発の理論
    3. 液体の凝集力の起源
    4. 液体の理論のモデルへの導入のポイント
  3. 溶液の理論
    1. 溶液の一般論
      1. 溶液とは
      2. 平衡状態の溶液の化学ポテンシャル
      3. 非平衡状態の溶液の化学ポテンシャル
    2. 高分子溶液の特徴
    3. 溶液の理論のモデルへの導入のポイント
  4. 表面・界面の理論
    1. 表面張力
    2. 界面のぬれ
    3. 界面のゆらぎ
    4. 表面・界面の理論のモデルへの導入のポイント
  5. 溶媒の蒸発速度の理論
  6. 溶液中の溶質・溶媒の動力学
    1. 拡散方程式
    2. 流体方程式
    3. 揮発中という非平衡状態での動力学
      1. 化学ポテンシャルからの拡散係数の導出 (平衡系)
      2. 化学ポテンシャルからの拡散係数の導出 (非平衡系)
  7. 平坦な基板上に塗布された高分子溶液の揮発過程
    1. 最もシンプルなモデル化
    2. シンプルなモデルの改良
    3. 精密なモデル
    4. 数値シミュレーション結果の例
      1. 膜厚分布の時間発展
      2. 乾燥後の膜厚分布の乾燥速度依存性
      3. 乾燥後の膜厚分布の塗布膜厚依存性
      4. 乾燥後の膜厚分布の濃度の拡散係数依存性
      5. 乾燥後の膜厚分布の溶媒の拡散係数依存性
      6. 乾燥後の膜厚分布の固有粘性率依存性
      7. 乾燥後の膜厚分布の蒸発潜熱依存性
  8. シミュレーション技術
    1. 拡散方程式の解法
    2. 流体方程式の解法
  9. 実験によるモデルの検証
  10. モデルの発展
    1. 3次元モデル
    2. 溶質の種類が複数ある場合
    3. 溶媒の種類が複数ある場合
    4. 具体的な現象へのモデルの応用 (様々なムラ等)
  11. 膜厚制御の実際、今後
    1. 様々なムラ等の制御の例
    2. 端部の凹凸の制御の例1:温度管理
    3. 端部の凹凸の制御の例2:気圧管理
    4. 端部の凹凸の制御の例3:濃度管理

会場

芝エクセレントビル KCDホール
150-0013 東京都 港区 浜松町二丁目1番13号
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