導電性高分子は、その高い電気伝導度と高分子特有の加工性を活かして、電解コンデンサの陰極材料や帯電防止剤として実用化されました。その後、荷電キャリア担体としての機能にも注目が集まり、電界効果型トランジスタ (FET) 、有機エレクトロルミネッセンス (EL) および有機薄膜太陽電池の実用化を目指した開発がスタートし、現在も実用化に向け開発が継続しています。この間、高次構造の制御技術、バンドギャップの狭いドナー・アクセプター型共重合体の開発などによりFETおよび太陽電池の性能が大幅に向上しました。また、印刷法でデバイスを製造するプリテッドエレクトロニクスが注目を集め、その主要な材料として導電性高分子の開発が加速しました。 現在は、これらの技術をベースに、導電性高分子の開発が新たな飛躍の時代に入ったと捉えることが出来ます。電気伝導度や移動度などの性能が1桁以上も向上した導電性高分子が数多く開発され、デバイスの高性能化と共に、熱電変換など新規分野の開発が拡大しています。 具体的には① 8,000 S/cmを超える高導電性PEDOT、② 10 cm2/V・s以上の高移動度を示す有機溶媒可溶なp型導電性高分子、③ 空気中での安定性が良好で5 cm2/V・s以上の高い移動度を示す有機溶媒可溶なn型導電性高分子、④ 無次元性能指数 (ZT) が0.42と高い熱電変換効率を示す導電性高分子などが挙げられます。また、導電性高分子との複合化により、Liイオン電池やスーパーキャパシタの性能向上が図られています。さらに、導電性高分子の柔軟性と生体適合性を活かし、ウェアラブルデバイスなど医療分野への応用も活発化してきています。 本セミナーでは、上述した最近の開発動向と今後の課題について詳細に紹介すると共に、導電性高分子の基礎についても解説します。