スクリーン印刷は、エレクトロニクスやグラフィック・加飾印刷などの多くの分野で60年以上の長きにわたり利用されてきたにも関わらず、未だに管理が困難で職人技が必要だと思われています。そろそろ考え方を変えて、スクリーン印刷自体が管理困難だったのではなく、今までの管理手法が間違っていたと認識を新たにすべきです。
スクリーン印刷にも理論があります。印刷されるインキ、ペーストの身になってプロセスを考える「ペーストプロセス理論」です。この理論は、私が長年にわたり仮説と検証を繰り返し実用性がある考え方として確立し、多くの印刷現場で実証を行なってきたものです。エレクトロニクス分野のみならず、グラフィック、加飾、捺染などでの高品質スクリーン印刷実践の目的であれば、すべてに通用する考え方です。スクリーン印刷に対する先入観を捨て、論理的整合性の観点から実践いただければこの理論の正しさが理解していただけると思います。これまでの対策での成功の理由も失敗の理由もこの理論で説明ができるようになります。この理論を信頼し実践して頂ければ、スクリーン印刷は、今後の技術的伸び代が最も大きい印刷プロセスであることが実感できるはずです。
そもそも印刷とは、先ず「刷版」の性能が向上し、それに合わせた印刷性の高いインキが開発され、それぞれの印刷品質を向上させてきました。他の印刷工法では、版とインキの技術進歩でほとんどの企業が「技術限界」に近いレベルの印刷を行っています。しかしながら、スクリーン印刷においては、「刷版」であるスクリーン版の主要素であるメッシュ材料の技術進歩に、インキの印刷性能が十分に追随しているとは言い難く、未だに「技術限界」の50%以下での適用例が多いと思われます。2012年、従来の3倍の強度を有する超高強度ステンレス650メッシュが開発され、スクリーン印刷の長年の懸念であった、高精細印刷での「版離れ」と「版ひずみ」という究極の課題が解決されるまでになりました。今後、超高強度メッシュに適合した印刷性能が高い高粘弾性インキが多くの分野で開発されることで、誰でもが高品質なスクリーン印刷を実践できる環境が整うことになると思われます。なお、スクリーン印刷は「技術限界」の50%以下での適用例が多いということは、言い換えれば、今後の技術的及びビジネス的な「伸び代」が非常に大きいとも言えます。
本講演では、スクリーン印刷の原理やメカニズムおよび要素技術について説明し、インキ・ペーストの粘性・弾性や濡れ性と印刷性能の相関を理解することで高品質印刷プロセスが高度に適正化できることを分りやすく解説します。さらに、最新のエレクトロニクスや高精細・高品位加飾印刷での具体的な応用例と実践方法についても詳しく解説します。
- はじめに
- 本来、スクリーン印刷は最も安定な印刷工法
- 先入観を捨てるためのアンラーニング (学習棄却) の重要性
- トヨタ生産システムとスクリーン印刷
- (100%) – (歩留まり) =不良率 不良には原因があり、「ゼロ」にできる
- 「ワーストから潰せ」ワーストはインキの印刷性能不足と版の不適正
- 各種印刷の種類とインキの粘度 適正化されているか?
- スクリーン印刷は「特殊印刷」、だから印刷安定性が高い
- 高粘度インキが安定して連続印刷できる「インキング」の原理
- 「ペーストプロセス理論」の考え方の基本
- 印刷条件のほとんどは、高品質印刷の為の「前提条件」
- スクリーン版の反発力での「版離れ」が最も重要
- 「オフコンタクト印刷」と「コンタクト印刷」の大きな違い
- 「コンタクト印刷」とは、インキが固体化してからの「版剥がし」
- メタルマスクでの「特殊オフコンタクト印刷」の有用性
- スクリーン印刷の4つのカニズムの理解
- 「ローリング」のメカニズム
- 「充てん・掻き取り」のメカニズム
- 「版離れ」のメカニズム
- 「レベリング」のメカニズム
- スクリーン印刷装置とスキージ
- 印刷機の種類とスクリーン版の違い
- 印刷位置合わせの方法
- ピールオフと実クリアランス
- スキージが最も重要な印刷パラメータの要素
- 最適なスキージの選択方法
- 適正なスキージのエッジ仕上げ方法
- 4つの印刷条件の適正化
- 4つの印刷条件と印刷品質への影響
- スキージ印圧の設定方法の違い
- 「適正印圧」の定義と設定方法
- スキージ角度、速度と「充てん力」
- スクリーン版とスクリーンメッシュ
- ステンレスメッシュ開発の歴史とスクリーン印刷の技術進歩
- スクリーンメッシュの「強度指数」
- スクリーンメッシュ開口率とインキの吐出性
- 超高強度ステンレスメッシュでの課題解決
- 倍の版ギャップでもひずみのない「無変形スクリーン版」
- スクリーン版の製作方法
- スクリーン版の洗浄方法
- インキ・ペーストの印刷性能
- インキと基材との濡れ性の影響
- インキの粘性と弾性の理解
- 印刷中のインキの含有溶剤の揮発と印刷膜厚
- 高品質スクリーン印刷プロセス実践のための具体的な対策手法
- 印刷均一性を阻害する要因とその対策手法
- 寸法精度向上のための対策手法
- 印刷解像性向上のための対策手法
- 印刷膜厚整合のための対策手法
- ファイン、中間ライン、ワイドパターンでの印刷膜厚の違いとそのメカニズム
- スクリーン印刷におけるその他の不具合対策
- スキージの適正な二次元変形と阻害する要因
- 乾燥のメカニズムとその重要性
- 静電気とインキの糸引き対策
- スクリーン印刷8つの適用工法
- べた
- ファイン
- ドット
- スルーホール
- ビア埋め
- 落とし込み
- 積層印刷
- 転写印刷
- 先進の高品質スクリーン印刷の応用
- IoT (Internet of Things) と大面積エレクトロニクス
- 大面積エレクトロニクスとプリンテッドエレクトロニクス
- プリンテッドエレクトロニクスを支えるスクリーン印刷技術
- フレキシブルMEMS電流センサーの印刷技術
- エッチングレジスト印刷
- 太陽電池30μm電極印刷
- プリント基板 銀/銅ペースト配線基板
- 高品位・高精細スクリーン加飾印刷
- スクリーン印刷による有機トランジスタの作製
- CNTインキのスクリーン印刷