粉体を扱う技術の中でも「造粒操作」は、粉体・粒体に期待する機能を付与する操作であり、多くの分野できわめて大切な基礎技術になってきた。医薬 (それも製剤分野) 、機能食品、化粧品、電池、トナー、電子材料、いわゆる機能性材料分野ではもはや微粒子の存在を無くしては語れない。生体内の人工赤血球や、人工血小板等、人体に関わる機能性粒子の研究成果も著しい。一方では気体、液体処理と比べて、固体微粒子である粉体は、必ず「混相流体」の形態を取るために扱いが難しく、粉であるが為のトラブルが発現し易い。同じ化学式、粒度分布でも、ちょっとした表面活性や形態、環境湿分の違いで、その集合体の挙動は大きく変わる。
本講座では、粉体操作を俯瞰して、操作中に物性が変わってゆく粉体プロセスの体験的注意ポイントを示し、文献では得られない実践的な対応実例を解説する。講義中に粉体挙動実演透明モデル (粉体挙動見える化) を駆使して参加者に運転パラメーターを自分決めてめて運転し、その「原因と結果」を肌で体験感じ取るコーナーを設ける。バインダーや添加剤の選定も、目的に応じた選定を行わないと「粒はできたが木的機能を発揮しない」と言う事になりかねない。粉体のトラブルは読んだり聞いたりしただけでは感覚として腑に落ちないことが多く、青春と同じ様に自分で体験して初めて「深く記憶に固定」される。若い技術者が大きなトラブルを避けてプロセスを構築する為にも、多くの小さなトラブルを体験して、感性として応用の幅の広い技術者になっていただける様に解説する。
- 始めに;粉体技術を俯瞰する
- 目的の「機能性粒子」を造る。微粒子に目的機能を付与する。
- なぜ粉体プロセスは一般の化学プロセスと比べて難しいのか?
- 粉体物性が操作中に大きく激変する理由、粉は魔物?
- プロセスのおける「粉体物性要求事項」
- 造粒の基礎
- 造粒製品の機能に応じた「造粒原理」を採用する。
- 造粒原理の整理、造粒現象のメカニズム。
- 造粒原理と造粒装置の関係。
- 造粒装置とその応用例;どんな分野にどの装置が使われているか。
- バインダーの役割と選択根拠。
- 添加剤の目的と効果。
- 造粒に必要な要素
- 固体粒子、気体、液体の、「混相流体」という概念。
- 気流中の粒子の挙動;「ストークスの式」
- 液体の架橋現象 ;「アッターベルグ・リミット」
- 乾燥を伴う造粒現象;「乾燥現象と乾燥カーブの理解」
- 分散・分解を前提として造粒する (機能を発揮するのは造粒を崩壊させる事)
- 粉体プロセスにおけるトラブル対応
- 粉体挙動の予測と対策
- 粉体プラント特有の「トラブル分析」とその発生理由
- 複雑なトラブルは「シンプルな要素」に分解する
- それぞれの対策方法と、その実施タイミング
- 3つの基本的「トラブル対策」
- エスケープルート的トラブル対策
- 「事前トラブル対策」と「事後トラブル対応」
- トラブル予測技術と「エスケープルート・トラブル対策」
- 実験室における粉体物性と、生産プロセスにおける物性の違い
- コストパフォーマンスに優れたエスケープルート・トラブル対策
- 粉体プロセスにおけるエスケープルート・トラブル対策の実例
- 粉体の挙動を体感する「装置内粉体挙動の見える化」
- 透明アクリル製粉体挙動確認実演モデルの目的
- 経験と体感による「運転条件の違いによる粉体挙動の変化」
- 造粒、乾燥、粉砕装置の内部粉体挙動例を体験する
- 聴講者が参加する小型実演モデルの運転体験
- バインダー選定の違いによる造粒機内粉体挙動の変化を体験する
- 空塔速度の設定による、流動層乾燥/造粒機の現象の変化
- トラブルを経験して解決することが、大きなトラブルを予防する
- 粉体プロセスでは新しい原料を扱う度に小さなトラブルはつきもの
- 大きなトラブルになる前の、予測と対応思考手順
- 失敗学から得る「チャレンジでのトラブル予防方法」
- 現場で感じる「違和感」と、経験を分析したエッセンスの関係
- 写真、動画に加えるべき「感覚としての体験要素」
- おわりに
- 信頼される技術者になる為の、日々の姿勢
- 誰も望まないトラブルを「自分が解決する事」で得られる体験について
- 機能性微粒子取り扱い技術と、これからの日本のものづくりの将来
- ドイツ;ニュールンベルグ粉体工業展、USAシカゴ;パウダーバルクソリッド展示会トピックス