第1部 LED用蛍光体の新規材料の開発状況と今後の方向性
(2016年9月5日 10:00〜11:30)
蛍光体材料は正確なマーケット情報がない分野である。そのため、LED用蛍光体はバックライトやLED照明で使用されている重要な部材でありながら、新規材料の開発状況について多くの新規参入研究者は理解できない。LED蛍光体に関する正しい技術情報およびマーケット情報を、世界中の研究者と企業を直接訪ねて得た。
本講演では、現行の白色LED用蛍光体の長所と欠点だけでなく、それを解決するための新規蛍光体への取り組みを自身のグループだけでなく世界的な動向も含めて、講演者が実際に直接的にコンタクトした生きた情報として幅広く解説する。
- 蛍光体の基礎知識と設計
- 他の実用蛍光体とLED蛍光体の設計における大きな違い
- 白色LED中の青色光が危険視される理由には根拠がない
- 実用LED用蛍光体の長所と欠点
- 黄色 (Y,Gd) 3 (Al,Ga) 5O12:Ce (日亜化学) 優れた熱特性と特許問題
- 黄色 (Ba,Sr,Ca) 2SiO4:Eu (豊田合成) 化学的安定性はコーティングで解決したが熱特性は?
- 黄色α-Caサイアロン:Eu 苦戦している理由は?
- 燈色 (Ba,Sr) 3SiO5:Eu 劣化の克服で色を改善する利用法はあるか?
- 赤色 (Ca,Sr) 2Si5N8:Eu カズンに匹敵する優れた蛍光特性も劣化問題の解決は?
- 赤色 (Ca,Sr) AlSiN3:Eu リモートフォスファーに対する対応が課題?
- 青緑-黄色 (Ba,Sr,Ca) Si2O2N2:Eu 魅力的な色に対して、安定性の低さの罠
- 緑色β-サイアロン:Eu 思ったほど色が良くないのに使われる理由は?
- 緑色Ca3Sc2Si3O12:Ce 新しい照明用緑蛍光体に対する逆風とは?
- 緑色CaSc2O4:Ce 価格の問題はあるのか?
- 黄色Li2SrSiO4:Eu 新しい黄色蛍光体のビジネス的な問題点
- 緑色Ba3Si6O12N2:Eu 既存蛍光体との差別化が難しかった?
- 黄色La3Si6N11:Ce YAGとの違と最近の採用状況は?
- その他の蛍光体
- その他の最新の話題
- 1kg何十万円から何百万円以上の高価なLED用蛍光体がなぜビッグビジネスにならないのか?
- リモートフォスファーのような新しい部材構成と本当に効果があるのか?
~実はリモートという言葉と違う使い方が本質~
- 水溶性シリコン化合物や気相法などの新しい蛍光体の合成手法、気相法により蛍光体が2.6倍明るくなるは本当か? 新しい合成手法の長所と問題点
- 窒化物合成のノウハウ、何が一番重要なファクターか?
第2部 窒化物およびフッ化物系蛍光体の物質設計、合成と固体照明等への応用
(2016年9月5日 12:10〜13:40)
Eu2+、Ce3+など、発光に5dが関与する希土類イオン、同様に3d軌道間の電子遷移が発光に寄与するMn4+を賦活剤とし、非酸化物、複合アニオン化合物など母結晶とする蛍光体を取り上げ、これらのLED固体照明用蛍光体などへの応用の現状と今後の展望について紹介する。
- 希土類賦活窒化物系蛍光体
- 窒化物母結晶の構造と物質設計
- 合成方法/条件と原料
- 発光特性とその利用
- 最近の話題
- 酸窒化物系蛍光体
- 酸窒化物母結晶の構造と物質設計
- 合成方法/条件と原料
- 発光特性とその利用
- 最近の話題
- フッ化物系蛍光体
- フッ化物母結晶の構造と物質設計
- 合成方法/条件と原料
- 発光特性とその利用
- 最近の話題
- 酸ハロゲン化物系蛍光体
- 酸ハロゲン化物母結晶の構造と物質設計
- 合成方法/条件と原料
- 発光特性とその利用
- 最近の話題
- 今後の展望
第3部 青色励起可能な酸化物系赤色蛍光体の設計とその特性
(2016年9月5日 13:50〜15:20)
白色LED用蛍光体の開発分野において、効果的に新規蛍光体を探索し、高機能化の達成を可能にする普遍的な蛍光体合成技術が求められています。近年、材料探索や高機能無機材料合成に適合する溶液合成法の重要性が認識されてきましたが、実際に導入するにはまだまだ敷居が高い状況です。
本セミナーでは、溶液合成法の原理と適用例を平易に解説し、ついで並列合成による蛍光体探索および蛍光体の高機能化の実際を徹底的に解説します。本セミナー受講により、蛍光体合成の初心者であっても、『いつでも・どこでも・誰も』が行うことの出来る蛍光体探索技術と蛍光体の高機能化技術を取得できます。
- はじめに
- 白色LED:第4世代の灯り・白色LEDの原理・白色LEDの応用
- 白色LEDにおいては演色性向上が重要
- 蛍光体開発研究分野での共通の目標
- “蛍光体をつくる”に求められること
- 高い発光効率を実現する蛍光体合成手法~シリケート系酸化物蛍光体合成を例に~
- 蛍光体を溶液法で合成する
- グリコール修飾シラン (GMS) を用いたシリケート系蛍光体の合成方法
- 水熱ゲル化法によるCa3Sc2Si3O12:Ce3+の合成
- 均一沈殿法によるのZn2SiO4:Mn2+合成
- 凍結乾燥法による (Sr,Ba) 2SiO4:Eu2+の合成
- アモルファス金属錯体法によるBa3Si6O12N2:Eu2+の合成
- セルロース支援液相前駆体法 (LPP法) による (Ca,Ba) 2SiO4:Eu2+の合成
- 蛍光体の発光効率向上にフラックスは不可欠
- 新規蛍光体の探索
- “蛍光体をさがす”に適した手法
- なぜ新規蛍光体が頻繁に発見されないのか?
- 鉱物にヒントを得た並列合成による新規蛍光体の探索
- 鉱物にヒントを得た溶液並列合成法による新規シリケート系蛍光体の探索
- 霞石をヒント:近紫外光励起で黄緑色発光蛍光体 NaAlSiO4:Eu2+
- ベニト石をヒント:近紫外光励起で青緑色発光蛍光体 BaZrSi3O9:Eu2+
- ジャービス輝石:近紫外光励起で緑色発光蛍光体Na3ScSi3O9:Eu2+
- ヒレブラント石をヒント:青色光励起で赤橙色発光蛍光体 SrCaSiO4:Eu2+
- 結晶サイト工学による新規蛍光体の設計
- 結晶サイト工学の概念、結晶サイト工学を理解するためのキーワード
- 結晶サイト工学による新規蛍光体発見の事例
- おわりに
- まとめ
- コストをかけず誰でもマスターできるユビキタス溶液法
- 民間企業との共同研究・技術移転の取り組み
第4部 銀含有ゼオライト系蛍光体の発光強度向上と劣化対策
(2016年9月5日 15:30〜17:00)
1995年には銀含有ZSM-5ゼオライトが340nmの蛍光を発するという報告があったが、このゼオライトはNOxを分解する光触媒としての研究が進められた。2008年頃より可視光を発する銀含有ゼオライト系蛍光体の研究が進められたが、通常環境下で蛍光特性が消失することから実用化を目指す動きは緩慢であった。弊社により、通常環境下でも蛍光特性が失われない蛍光体とする技術が確立され、2016年1月にはついに世界で初めて銀含有ゼオライト系蛍光体を量産することに成功した。しかしながら、これまで蛍光体としての研究が少ない銀含有ゼオライトは、その発光原理や発光強度の向上方法、また劣化対策について殆ど知見がないのが現状である。
レアアースを全く使用しないというメリット以外にも特徴のある銀含有ゼオライト系蛍光体について、これまでにわかってきたこと及び今後の可能性について紹介する。
- 銀含有ゼオライト系蛍光体とは
- 銀について
- ゼオライトについて
- 銀含有ゼオライト系蛍光体の誕生秘話
- 銀含有ゼオライト系蛍光体の製造方法
- 銀含有ゼオライト系蛍光体の評価方法
- 銀含有ゼオライト系蛍光体の特性
- 銀含有ゼオライト蛍光体の色調調整と発光強度向上に向けて
- ゼオライトの種類と結晶性の検討
- 銀含有量の検討
- その他の成分の検討
- 製造条件の検討
- 銀含有ゼオライト蛍光体の構造解析と劣化対策
- XRD&リートベルト解析
- UV-Visスペクトル分析
- EXAFS
- 実用化に向けて
- 樹脂内での安定性評価
- 「水」の制御
- 長期信頼性の評価