リチウムイオン二次電池は、エネルギー貯蔵デバイスとして大きく発展している。このデバイスの主要素材である正・負極の電極活物質の性質と課題を理解し、この課題の改善方法としての表面改質について解説する。この表面改質によれば、電極活物質材料粒子の表面のみの僅かな改質で粒子全体の特性を改善でき、弊害が少なく、大きな効果を得ることができ、きわめて有用な技術である。そして、今後のリチウムイオン二次電池の特性向上を進めるにおいて、その有用不可欠な重要技術である。
本講では、正・負極の各活物質について、それぞれの課題とそれに対応した表面改質技術について解説する。
- はじめに
- 実用的表面とは
- リチウム電池概論
- 活物質の評価技術、ならびに、性質と課題
- 粉体特性の評価
- セル特性の評価
- 各活物質の性質と課題
- 活物質の表面改質の目的と効果
- 機能付加効果
- 導電性付与
- 犠牲腐食性付与
- 高容量化
- 粒子バルクへの効果
- 結晶変形抑制
- 結晶変態抑制
- イオン拡散性向上
- 被着封止効果
- 粒子割れ抑制
- 酸素放出抑制
- 表面反応抑制
- 電解液界面への効果
- SEIの生成と制御
- 金属イオン溶出抑制
- LiCoO2
- 高充電圧化による容量向上
- 活物質による被覆処理
- Li (NiCoMn) O2
- LiMn2O4
- LiFePO4
- 金属酸化物による被覆処理
- ZrO2
- Al2O3
- MgO
- TiO2
- SiO2
- LiNiO2系 (高Ni-NC, 高Ni-NCM, NCA)
- コアシェル型・組成傾斜型活物質
- 金属酸化物による被覆処理
- ZrO2
- TiO2
- La2O3
- NiMnCo三元系
- 活物質による被覆処理
- Li (NiMn) O2
- LiFePO4
- 金属酸化物による被覆処理
- Al2O3
- ZrO2
- LiAlO2
- Li過剰固溶体系
- 金属酸化物による被覆処理
- TiO2
- SiO2
- Li2ZrO3
- 金属リン酸化物による被覆処理
- AlPO4
- LiNiPO4
- LiMn2O4系
- 活物質による被覆処理
- LiCoO2
- スピネル系活物質
- 金属酸化物による被覆処理
- SiO2
- ZrO2
- ZnO
- CeO2
- 導電性材料による被覆処理
- 5V級スピネル系
- 金属酸化物による被覆処理
- Al2O2
- SiO2
- ZnO
- LiAlO2
- 金属リン酸化物による被覆処理
- AlPO4
- FePO4
- LiFePO4
- LiFePO4
- 導電性向上技術の位置付け
- 炭素質導電層の形成処理
- 非炭素質導電層の形成処理
- 金属材料導電層の形成処理
- 非金属導電層の形成処理
- リチウムイオン導電層の形成処理
- Li4Ti5O12
- 炭素質導電層の形成処理
- 非炭素質導電層の形成処理
- 金属導電材料による被覆処理
- 非金属導電層の形成処理
- 炭素質電極活物質
- 表面の化学的改質
- 表面酸化処理
- 表面フッ素化処理
- 炭素質の被着処理
- ソフトカーボン被覆処理
- ハードカーボン被覆処理
- 非炭素質の被着処理
- 金属・金属酸化物の被着処理
- 有機高分子材料の被着処理
- まとめ