本セミナーでは、推定1,200万キロワット超の国内発電資源を持つマイクロ水力発電の市場動向を解説いたします。
水力発電の歴史は長い。もともと日本は、明治以降は水力発電を中心に経済発展を遂げてきたが、その後の高効率の火力発電の登場により、大型水力発電のみならず、中小水力発電の位置づけも大きく低下した。しかし、地球温暖化対策の一つとして地球環境に優しいマイクロ水力発電が再び大きな注目を集め、普及が急速に拡大している。特に、2012年7月1日に開始された再生可能エネルギーによる電力の固定価格買取制度における突出した太陽光発電バブルが見直されている状況において、発電コストが安価で出力変動が小さいマイクロ水力の重要性が増している。 水力発電そのものの歴史は100年を超え、発電技術は確立されている。世界全体の水資源量は、水の位置エネルギーとして、電力換算で41兆キロワット時と推計され、世界の電力需要量20兆キロワット時の2倍にも達する。しかし、従来は電力需要地から離れた遠隔地のダムによる大型水力発電所が中心であり、環境破壊、長距離送電による送電ロスが課題とされ、加えて建設が容易な火力発電の普及により、水力発電は重要視されなくなっていた。だが、炭酸ガスの排出削減、原子力発電の見直し等により、再生可能エネルギーの一つであるマイクロ水力への期待が大きくなっている。 マイクロ水力発電とは、通常は1,000キロワット以下の中小水力発電を意味し、巨大なダムを必要とせず、中小河川、農業用水、ビル、上下水道、一般家屋等、一定の水の高低差、水流があれば発電できる電源である。マイクロ水力発電の特徴は、第1に一定の水量があれば、立地の制約がなく、水量の多い山間部のみならず、都市部におけるビルの落差を利用した発電も可能であること、第2におよそ水流があれば、どこでも発電できることから、環境省による推定では、日本全国で少なくとも1,200万キロワットを超えるマイクロ水力発電資源が存在すること、第3に太陽光発電等の太陽エネルギーを起源とする再生可能エネルギーと比較して、出力変動が小さいこと、第4にダムを建設する大型水力発電所と異なり生態系破壊の可能性が小さいこと、第5に発電コストが安価であること、第6に固定価格買取制度により、有利な高値で電力を販売することが可能なこと等数多くのメリットが挙げられる。2016年度以降の買取価格も、マイクロ水力発電を促進するために、高値が維持されている。現状では水利権に関する規制が残されているものの、農業用水に関する規制緩和が行われ、国産エネルギーとしてのエネルギー自給率の向上、雇用を創出する地域振興策、地産地消のエネルギーとして、マイクロ水力発電の将来的な大きな飛躍が期待されている。途上国においても、内陸部の農村等におけるマイクロ・グリッドの構築が日本の総合商社を中心に行われている。 マイクロ水力発電を取り巻く日本と世界の最新動向と、今後の市場拡大に伴う、巨大なビジネス・チャンスに関して、資源エネルギーの第一人者が的確に解説する。