第1部 バイオマスとしてのリグニン – 化学構造と基本的な反応性 -
(2016年7月25日 13:00〜14:00)
樹木から何らかの方法によって取り出して利用研究の対象とする各種の単離リグニンと、樹木の細胞壁中に存在するリグニンとは化学構造や化学的反応性が大きく異なっている。また、樹木によってもリグニン化学構造は大きく異なる。これらのことが、リグニンの利用研究を新しく始める研究者や技術者にとって小さくない障壁になっていると考えられる。
本講演では、できる限りその障壁が小さくなるようリグニンの基本的な化学構造と反応性、および各種単離過程でのそれらの変化に焦点を絞って、説明する。
- リグニンとは
- 植物細胞壁とリグニン
- 地球環境の形成に果たしたリグニンの役割
- リグニンの難分解性
- リグニンの定量法、化学分析法
- リグニンの化学構造
- リグニンの生合成
- リグニンの芳香核構造
- リグニンを構成する“モノマー”間の結合様式
- リグニン化学構造の多様性
- リグニン化学構造の法則性
- リグニンの基本的反応性
- リグニンの塩基性下での反応
- リグニンの酸性下での反応
- リグニンの酸化反応
- リグニンの生分解
- リグニンの化学構造と反応性の間の定量的関係
- 産業過程におけるリグニンの反応
- 化学パルプ化における脱リグニン反応 (1) KP法
- 化学パルプ化における脱リグニン反応 (2) ソーダAQ法
- 化学パルプ化における脱リグニン反応 (3) SP法
- バイオマス原料としてのリグニン
- 化学パルプ排液リグニン
- 様々なバイオリファイナリー過程から得られるリグニン
- リグニン利用の基本的な考え方
- 高分子としての利用
- リグニン由来低分子化合物の利用
第2部 リグニンを活用した熱硬化性樹脂の開発
(2016年7月25日 14:15〜15:15)
20世紀において、石油資源はプラスチック原料やエネルギーとして採掘され限りなく使用されてきた。しかし、近年、石油を初めとする化石資源の枯渇化、プラスチックの燃焼に伴う大気汚染や大量の二酸化炭素の発生による地球温暖化の問題、産業廃棄物による環境汚染等が深刻な環境問題となっている。そこで、石油や石炭由来のような化石資源ではなく、天然物由来の資源を利用した環境破壊の恐れの少ないプラスチック材料の開発が盛んに進められている。
本研究では、近年、その有効利用が望まれている天然物由来の資源であるリグニンと、フェノール樹脂やエポキシ樹脂に代表される熱硬化性樹脂との複合化により、リグニンを活用した高性能熱硬化性樹脂の開発について紹介する。
- はじめに
- バイオマス資源
- リグニンとは
- 熱硬化性樹脂の種類と性質
- リグニンの有効利用
- リグニンを活用した熱硬化性樹脂の高性能化
- 木質系リグニンおよび草本系リグニン
- 粒径の異なるリグニン
- 純度の異なるリグニン
- 反応性リグニン
- 反応性リグニン
- 反応性リグニンの作製方法
- 反応性リグニンを活用した熱硬化性樹脂の高性能化
- 成形材料の作製およびその評価
- 成形品の作製およびその特性評価
第3部 リグニンを原料としたエポキシ樹脂硬化物の特性と応用
(2016年7月25日 15:30〜16:30)
木質バイオマスから得られるリグニンを用いた熱硬化性樹脂の開発動向と、日立製作所で開発した水蒸気爆砕で得られる木質リグニンを用いた高耐熱エポキシ樹脂の開発及びその将来展望について述べる。
- 背景
- 日立グループの環境ビジョン
- バイオマス由来樹脂材料の概要
- リグニンの樹脂応用
- 樹脂原料としてのリグニン
- リグニンの樹脂応用研究事例
- 水蒸気爆砕リグニンの性状
- 水蒸気爆砕とは
- 水蒸気爆砕リグニンの化学的物質
- リグニンを用いたエポキシ樹脂硬化物の特性
- リグニンを用いたエポキシ樹脂硬化物の耐熱性
- リグニンを用いたエポキシ樹脂硬化物の電気特性
- リグニンを用いたエポキシ樹脂のその他の特性
- リグニンを用いたエポキシ樹脂硬化物の電気機器への適用検討
- リグニンを用いた樹脂硬化物の将来有望