現代医療に医療機器は欠かせない。そして、検査や治療の発達には医療機器が大きく貢献してきた。では、そんな医療機器に最先端の技術が生かされているのか?最先端の材料や電子部品が利用されているのか?実は冷静に医療機器を見てみると目覚ましい発達をしている機器と、まったく進化していない機器がある。これは我が国に限ってのことではない。 また、産業界では日本の多様かつ高い技術力に裏付けられた高品質な製品があるのに、生命維持装置や手術機器のほとんどは欧米製である。そして、医療機器は高コストであり医療費の高騰の要因となっている。 ものづくり企業が医療機器開発に参入しようとするが、多くのハードルが立ちはだかる。そのひとつが医療業界を囲っている大きな壁であり、外からは内側がよく見えない。見えない世界のニーズを把握し、それを満たす機器や材料を作り、製品を外から売り込むことは明らかに難しい。しかし、この壁に穴をあけて医療現場に自由に出入りできる開発者はまず居ない。 内側から扉を開けて開発者を招き入れてくれる医療者も見つからない。それでも諦めずに医療機器開発に参入するなら、せめて内側の臨床現場にある機器の問題点や医療者の特殊性を知ることは、ひとつのステップではなかろうか。 本講演では、臨床で医療機器を扱い、また作りあげてきた立場から、医療現場の特殊性と抱える問題点を紹介すると共に、医療機器におけるイノベーションがどうしたら起こせるのかを皆さんと一緒に考える講演会にしたい。